担当者からのオススメ!

Recommendation

販売担当よっしーオススメの本 『きのうのオレンジ』 藤岡陽子 著
販売担当よっしーオススメの本

作品制作・写真/金沢和寛

読みながら、自分でもびっくりするくらい泣いてしまいました

主人公の笹本遼賀は33歳。都内のレストランで働きながら、人並みに、真面目に生きてきたが、胃の不調で受けた検査の結果はがんだった。
ストーリーは、いわゆる「闘病もの」ではありますが、そのように括ってしまうと、この作品の良さは伝わりきらない……!と思っています。

著者の藤岡陽子さんは看護師として働かれている方ということで、病院や患者にかかわる人々の描写は非常にリアルです。また、病を宣告された遼賀の感情も痛いほど伝わってきます。がんに冒される不安・恐怖・絶望──。しかしそんな状況の中で、15歳のときに弟の恭平とともに雪山で遭難した経験が、遼賀を勇気づけ奮い立たせてくれます。当時遼賀が履いていたオレンジ色の登山靴は、生きることから逃げないこと、そして遼賀の優しさの象徴でもあり……とにかく泣けてしまいます。

さらに患者の遼賀だけでなく、周囲の人々──母の燈子、同級生で看護師の矢田泉、そして弟の恭平の視点からも物語が綴られます。遼賀は、賞賛されるような目立った能力はなくとも、幼いころから真面目で、優しくて、誠実で、心遣いがあり、深くかかわる人々に慕われる人柄の持ち主でした。その人柄が闘病を通じて浮き彫りになっていきます。遼賀をとりまく人々は皆温かく、彼のことを大切に思っており、それぞれの感情が心に沁みてまた涙が止まりません。そんな人と人のつながりや家族の愛の物語でもあると思います。

この作品はがん闘病を扱っていますが、病気よりも「生きること」について向き合った作品です。読み終わったときの気持ちは温かく、読む人の心に残るものが必ずあるはず、と確信しています(毎年の健康診断はしっかり受けようという意識も残りました)。

生きていく力をもらえる素敵な1冊、ぜひお手に取っていただきたいです。

プロフィール
  • よっしー
  • お酒より甘味派、特に抹茶スイーツが好物。
    家ではベッドに寝転がって本を読んだり、お風呂でのぼせるまでYouTubeをみたりとのんびり過ごしがちだが、仕事はきっちり早めに進めておきたいタイプ。
  • ミステリ、ファンタジー、アツいスポーツもの、心温まるヒューマンドラマなどの作品が好み。
    幼いころから図書館っ子で大学時代は書店アルバイト、そして文庫の販売担当になった筋金入りの本好き人間。
過去のオススメ!
  • 2023.09.20new きのうのオレンジ 藤岡陽子 著
  • 2023.01.20 白夜行 東野圭吾 著
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