- 明智小五郎事件簿 戦後編 Ⅲ「サーカスの怪人」「怪人ゴング」
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ある夕がた、少年探偵団の井上と野呂は、洋服を着てステッキをつく怪しげな骸骨顔の紳士に遭遇する。その骸骨紳士は「グランド=サーカス」のテントの中に姿を消し、それからサーカス内で恐ろしい出来事が次々と起こり始める(「サーカスの怪人」)。明智の姪である、花崎マユミが初の少女団員として活躍する「妖人ゴング」も収録。二十面相の正体と、彼の過去が明らかになる衝撃の戦後編、第3弾!
二〇一六年から二〇一七年にかけて刊行された『明智小五郎事件簿』全十二巻(集英社文庫)は、おかげ様で好評のうちに完結しました。これは江戸川乱歩が描く名探偵明智小五郎の戦前の活躍を、事件中の記述をもとにして発生順に並べ直し、当時の世相の移り変わりとともに鑑賞するという試みでした。
当時SNSなどでは、「戦後の明智小五郎の登場作品も、事件発生順に読んでみたい」という応援の声もいただきました。そしてついに皆様のおかげで戦後編が実現することになりました。お礼を申し上げます。
しかしご存じのように、戦後作品のほとんどは少年少女向けの「少年探偵団」もので、明智は一歩下がった存在であり、またかなり多くの作品数が書かれています。そこで戦後編では、一般向けの明智登場作品はすべて収録する一方で、少年少女向け作品は優れた作品、エポックメイキングな作品を精選して収録し、掲載を見送った作品については、本書に収録した作品と作品の間にコラムを書きましたので、戦後の明智の活躍を通して読んでいただけるようにしました。