よみもの・連載

北上次郎さんは、2023年1月19日永眠されました。
謹んでご冥福をお祈りいたします。

「いきなり文庫! グランプリ」第6回の優秀作は、赤松利市『東京棄民』に決定!

幻冬舎文庫 文庫初版
2011年6月10日刊

『空とセイとぼくと』 久保寺健彦

あらすじ

ホームレスだった父親が死んだ。犬のセイとホームレス生活を続けていた零。セイと餌を探し、遊び、一緒に寝ることさえできれば良かった。それで満足だった。だが、零が14歳になったころ、セイがフィラリアにかかってしまう。読み書きすらできない零は、治療費を捻出するため、新宿でホストとして働くことに。源氏名はポチ。失敗ばかりを繰り返していたが、ずば抜けた嗅覚を生かし、次第に頭角を現していく。数奇な運命の少年が、犬との絆(きずな)を守りながら成長していく姿を、ユーモアとリアリティあふれる筆致で描いた感動の物語。

角川文庫 文庫初版
2007年12月25日刊

『裸者と裸者 上 孤児部隊の世界永久戦争』
『裸者と裸者 下 邪悪な許しがたい異端の』 打海文三

あらすじ

応化2年2月11日未明、救国を掲げる佐官グループが軍隊を率いて首都を制圧し、救国臨時政府樹立を宣言。国軍は二分され、内乱が勃発! 両親を亡くした7歳と11ヶ月の佐々木海人は、妹の恵と、まだ2歳になったばかりの弟の隆を守るため、手段を選ばす生きていくことを決意。応化9年夏、烏山。両親の離婚後、ママの実家で暮らす双子の月田姉妹は、武装勢力に祖父母とママを殺された。偶然出会った脱走兵の海人の案内で命からがら常陸市へ逃げ、戦争を継続させているシステムを破壊するため、女性だけのマフィア、パンプキン・ガールズを組織し、世界の混沌に身を投じた。

集英社文庫 文庫初版
2022年9月25日刊

『GA・SHIN! 我・神』 花村萬月

あらすじ

東京の片隅でホームレスの謝花に拾われた赤ん坊、臥薪正太郎は500円玉硬貨を無限に生み出す特殊能力を持っていた。少年に成長した臥薪の力と触媒役の謝花を宗教ビジネスに利用しようとする「高階組」幹部、榊原の謀略により、二人は沖縄へと導かれ、臥薪を教祖に宗教組織を立ち上げる。そして、次第に臥薪と謝花は対立するようになってしまう。二人の戦いは神と地球規模にまで発展……。神とは? 宗教とは? 善悪とは? 五感に訴えるディテール描写と想像を超えるスケール感で揉(も)みくちゃにされるSF叙事詩。待望の文庫化。


北上
文庫カバー?
吉田
これ、アベノマスクにして欲しかった(笑)。そうしたら、風刺が効いて良かったのに、と思いました。
江口
あぁ、たしかに。
北上
オチがついたところで、そこまでにしましょうか。
江口
この『東京棄民』を、年度末のグランプリ大会に出場させるか否かを決めなければならないんですが。
北上
今月の優秀作にとどめましょうか。
吉田
それがいいと思います。
江口
お二人のご意見に従います。

2022年11月16日収録 座談会は感染対策に気をつけて行いました。

プロフィール

北上次郎(きたかみ・じろう) 1946年、東京都生まれ。明治大学文学部卒。本名は目黒考二。76年、椎名誠を編集長に「本の雑誌」を創刊。ペンネームの北上次郎名で「冒険小説論―近代ヒーロー像100年の変遷」など著作多数。趣味は競馬。
2023年1月19日逝去。

吉田伸子(よしだ・のぶこ) 青森県出身。書評家。「本の雑誌」の編集者を経てフリーに。鋭い切り口と愛の溢れる書評に定評がある。著書に『恋愛のススメ』。

江口洋(えぐち・ひろし) 神奈川県出身。集英社文庫編集部次長。本企画の言い出しっぺ。

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