担当者からのオススメ!

Recommendation

販売担当 シマシマ オススメの本 『オーパ、オーパ!! モンゴル・中国篇 スリランカ篇』 開高 健 著
販売担当シマシマ オススメの本

今回おすすめするのは開高健『オーパ、オーパ!! モンゴル・中国篇 スリランカ篇』です。
開高健さんが世界中の名魚、怪魚、珍魚を求め世界中の川、湖を旅した紀行文、ノンフィクションの傑作です。今回取り上げるのはそのオーパシリーズの第4弾、完結篇となります。
メインは狙っていた魚の釣果が得られるまでの紀行文ではあるのですが、秘境と言われるその地に至るまでの過程が事細かに書かれています。紛争や国同士の関係で外国人立入禁止となっている場所に踏み込むこともあります。中国の奥地に入る際は許可証が巡り巡って時の副主席まで行きトップダウンで一気に話が進み、取材のために道路まで作ったというエピソードも。スケールの大きさを感じます(当時の出版界が羨ましい……)。その土地の気候、風土や歴史背景なども事細かに取材され私が言うのもおこがましいですが歴史学術本としても十二分に読み応えがあります。そこに開高健さんの珠玉のコピーがちりばめられ、高橋fさんの臨場感溢れる多くの写真とで自分が行ったかのような気分にさせてくれます。


本が刊行された当時、ロシアはまだソ連です。中国はバリバリの共産圏です。スリランカは内戦の真っ只中です。40年経た今との違いを比べるのも一つの読む楽しさです。
今回「オーパ」の中でこの篇を取り上げたのはスリランカを今年私自身が旅したからですが、風景、人々のファッションの今との違いを多くの掲載写真で感じとることができます。非常に残念ではありますが、P.295にある世界遺産シギリア・ロックの壁画、今は酸性雨でほぼ消えかかっています。悲しい限りです。


シリーズ第1巻『オーパ!』の冒頭ではこのように記されています。
〈何かの事情があって野外へ出られない人、海外へいけない人、鳥獣虫魚の話の好きな人、人間や議論に絶望した人、雨の日の釣師……すべて書斎にいるときの私に似た人たちのために。〉
今テレビ、雑誌、書籍などで怪魚、珍獣、秘境ハンター(この辺になるとややバラエティ色が強いですが……)や多くの冒険家の書き手が新たに生まれています。開高健さんはその先駆者であり、今の書き手の多くが憧れ、影響を受け、リスペクトしている、第一人者です。私の拙い解説よりもまずはご一読いただければ、と。
2019年は開高健没後30年、2020年は生誕90年の開高健TheYearと銘打ち開高作品を改めて見つめ直すメモリアルイヤーとなっています。
これから読もうという若い方、かつて開高作品にどっぷりと浸った方、それぞれの入り方で開高作品に触れていただければと思います。

プロフィール
  • シマシマ
  • ワインが、お酒が好きすぎてワインエキスパートの資格を取ったノムリエ販売担当。本よりお酒のウンチクを語る時の方が饒舌??
  • 男くさい、涙を誘う本がフィクション・ノンフィクション問わず好み。令和の時代に昭和からアップデートされていない自分を顧みて、他のジャンルの食わず嫌いはいかんと思う日々。旅行に出かける前にたくさん本を買い込んで荷物がついつい増えてしまうタイプ。
過去のオススメ!
  • 2023.03.17new 23分間の奇跡 ジェームズ・クラベル 著/青島 幸男 訳
  • 2022.07.20 カティンの森 アンジェイ・ムラルチク 著 / 工藤幸雄 久山宏一 訳
  • 2022.04.21 腐葉土 望月諒子 著
  • 2021.12.03 存在の耐えられない軽さ ミラン・クンデラ 著 / 千野栄一 訳
  • 2021.07.02 しのびよる月 逢坂 剛 著
  • 2021.02.19 アポロンの嘲笑 中山七里 著
  • 2020.10.21 日々の100 松浦弥太郎 著
  • 2020.06.05 M8 エムエイト 高嶋哲夫 著
  • 2020.02.20 めぐりあいし人びと 堀田善衞 著
  • 2019.10.18 オーパ、オーパ!! モンゴル・中国篇 スリランカ篇 開高 健 著
  • 2019.06.21 水無川 小杉健治 著
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