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Recommendation

販売担当 シマシマ オススメの本 『めぐりあいし人びと』 堀田善衞 著
販売担当シマシマ オススメの本

作品制作・写真/金沢和寛

 今回おすすめするのは堀田善衞『めぐりあいし人びと』です。
戦後文学の巨匠、堀田善衞さんの語り下ろしによる回顧録。作家の回想としても興味深いですが、教科書や歴史書では計り知れない戦後史の様々な場面や当時の状況を窺い知ることができる1冊です。
 終戦時滞在していた上海についての記述では、占領下での中国人と日本人の関係性について、実際に過ごした方にしかわからない市民レベルの交流が書かれています。また李香蘭のスパイ疑惑が持ち上がった時に抗弁の知恵を考えだしたことも。
 1956年インドニューデリーで行われたアジア作家会議に参加し、そこに記者として来ていた女性がのちのインディラ・ガンジーであったこと。その縁で、父親のネルーと会談したとも書かれております。ネルーの印象は日本の政治家の矮小ぶりとは違い、深さやすごみを持った人との記述も。その様な作家同士の会議の中にCIAが文化に関する妨害工作を多く入れている当時の裏事情も垣間見られます。その後訪れたソ連では当時首相だったフルシチョフにも会い、モスクワの街の率直な印象を答え機嫌を損ねてしまった話というエピソードもあります。また、アジア作家会議の縁で知り合いとなったアルジェリアの青年にアルジェリアの独立が達成されたらフランスのサハラ砂漠での核実験を中止してほしいと伝え、その青年が後に外務大臣となりその約束が実現したということもあったそうです。戦後史の1ページに堀田善衞あり、です。
 世界の文学者、哲学者との交流や文学、文化、宗教についても語られています。モンパルナスの部屋で楽しく雑談をかわしたサルトル。刺身を豪快にたいらげる太宰治。スペインに移住して書き上げた名作『ゴヤ』が生まれる背景。
 本書の内容を語るための会が座談形式で何度か開かれましたが、当初は編集者とカメラマンだけだったものが、堀田座談の面白さを聞きつけた集英社の若手社員が何人も聴講希望に訪れ、最終回まで続いたとか。そんな堀田先生の深い教養と古今東西に自在に及ぶ歴史観に触れることができる1冊です。

プロフィール
  • シマシマ
  • ワインが、お酒が好きすぎてワインエキスパートの資格を取ったノムリエ販売担当。本よりお酒のウンチクを語る時の方が饒舌??
  • 男くさい、涙を誘う本がフィクション・ノンフィクション問わず好み。令和の時代に昭和からアップデートされていない自分を顧みて、他のジャンルの食わず嫌いはいかんと思う日々。旅行に出かける前にたくさん本を買い込んで荷物がついつい増えてしまうタイプ。
過去のオススメ!
  • 2020.06.05new M8 エムエイト 高嶋哲夫 著
  • 2020.02.20 めぐりあいし人びと 堀田善衞 著
  • 2019.10.18 オーパ、オーパ!! モンゴル・中国篇 スリランカ篇 開高 健 著
  • 2019.06.21 水無川 小杉健治 著
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