北上次郎さんは、2023年1月19日永眠されました。
謹んでご冥福をお祈りいたします。
「いきなり文庫! グランプリ」第6回の優秀作は、赤松利市『東京棄民』に決定!
- 江口
- それでは、第6回の「いきなり文庫! グランプリ」の座談会を始めます。今回の優秀作は赤松利市さん『東京棄民』です。これは新型コロナウイルスが猛威をふるった2022年、令和4年の秋を舞台にした物語ですが、刊行されたのが令和4年の5月なので、一応近未来小説ですね。日本政府が首都を見捨てる「東京逆ロックダウン」政策を打ち出して、つまり「東京からみんな出ろ」と。で、誰もいなくなった東京に、ホームレスを始め、現代の弱者たちだけが残っている、という設定の物語。
- 北上
- あのさ、いきなり疑問から始めて申し訳ないんだけど、この設定、無理があるよね。コロナの猛威を封じ込めるために、感染者を外に出さないようにと、その地域の住民を隔離するのがロックダウンだよね。これが正しい政策かどうかはともかく、その意味はわかる。でも、住民を全部外に出して、その地域を空白にするっていうのは――結局空白には出来ずに残った人たちがいて、このドラマが始まるんだけど――コロナ対策としては意味がない。
- 吉田
- たしかにそうですけど、でもここは、コロナ対策の是非を語る場ではなくて、政府から見捨てられた者たち、つまり棄民のドラマを成り立たせるための設定と考えればいいんじゃないですか。この物語のポイントはそこにあるので。
- 江口
- これがコロナじゃなくて原発事故の話で、事故原発周辺の街が舞台ならわかるんですけどね。面白かったので、私はまあ良しとするかと思っていました。
- 吉田
- 確かに設定としては矛盾があるんですが、そこを突っ込むと話が成り立たなくなってしまうので、今回は目を瞑る、ということで。
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