


『歌う丘の聖職者』
2025年5月20日発売
1,067円(税込)
文庫判/280ページ
ISBN:978-4-08-760797-0

文庫解説は宇垣美里さん!
(フリーアナウンサー・俳優)
重厚なファンタジーに酔いしれ、語られ得ぬ歴史に想いを馳せる。なんと贅沢な読み心地!
【あらすじ】
追悼の間に蝋燭が灯され、蜜蝋と万寿菊の香りが漂う夜。
聖職者ティエンの死を弔う、「物語の儀式」が始まる――。誇り高きティエン。慈愛に満ちた聖職者……各々が亡き人を語っては、手にする蝋燭を吹き消していく。そんななか参列したティエンの孫の語りから浮かんだのは、高潔な故人とはかけ離れた姿だった。一本、また一本。そして、最後の蝋燭が消えた時、思いもかけないことが起きる……。(『歌う丘の聖職者』)全2篇。
ありふれた英雄譚が鮮やかに覆る。お伽噺の奇才、ニー・ヴォが紡ぐ旅の聖職者と記憶を伝える鳥の摩訶不思議な物語シリーズ続編!

[主な登場人物]
【河畔の国へ】
チー
シンギングヒルズ大寺院の聖職者
オールモスト・ブリリアント
歴史を記憶し、伝える鳥(ネイシン)の一羽
ウェイ・ジンタイ
南猿拳の使い手、青翠諸島出身の女性
マク・サング
ウェイ・ジンタイの義妹
ラオ・ビンイ
ベトニー港から来た女性
マク・カーン
ラオ・ビンイの夫、コーアナム地方出身の男性
野猪イー
河畔の国の言い伝えに登場する女性の戦士
墓霊チェン
河畔の国の言い伝えに登場する男性の戦士
ニエ家の乙女
河畔の国の言い伝えに登場する絶世の美少女
ニエ師
ベトニー港に暮らす謎の白髪男性
【歌う丘の聖職者】
チー
シンギングヒルズ大寺院の聖職者
オールモスト・ブリリアント
歴史を記憶し、伝える鳥(ネイシン)の一羽
ルー
シンギングヒルズ大寺院の聖職者、院長代行
ティエン
シンギングヒルズ大寺院の高齢の聖職者
ツイ・イン・ハオ
アン帝国弁護士、ヴィ・イン・イー伍長の姉
ヴィ・イン・イー
アン帝国古代象部隊伍長、ツイ・イン・ハオの妹
クレヴァネス・ヒムセルフ
ネイシンの一羽、雄
ミリアド・ヴァーチューズ
ネイシンの一羽、雌。聖職者ティエンの相棒
チェップ
オールモスト・ブリリアントの娘

大好評ファンタジーシリーズ第1弾!

『塩と運命の皇后』
2022年9月16日発売
902円(税込)
文庫判/272ページ
ISBN:978-4-08-760780-2
あらすじ
デビュー作にして2021年ヒューゴー賞中長篇部門受賞!
50年ぶりに湖の封印が解かれるとき、追放された悲劇の皇后の伝説が幕を開ける───。歴史収集の旅をする聖職者チーは、ある時立ち寄った湖のほとりで、ひとりの老女に出会う。亡き皇后の侍女だという彼女に導かれ、チーは皇后が幽閉されていた屋敷を訪れる。そこで老女は思い出の品々を手に語り始める。美しく残酷な真実と運命の物語を。著者デビュー作にして2021年ヒューゴー賞受賞作。全2篇。

【著者プロフィール】
ニー・ヴォ
Nghi Vo
1981年、イリノイ州ピオリア生まれ。イリノイ大学アーバナ・シャンペーン校で政治学とメディア研究を専攻。2007年ウィスコンシン州ミルウォーキーに移住。同年、 “Gift of Flight “を発表して以来、さまざまな出版物に二十本近くの作品を発表。2021年に優れた新進ファンタジー作家に贈られるクロフォード賞を受賞。続いて同年、ヒューゴー賞の中長篇部門受賞。その他イグナイト賞、ローカス賞最終候補作にも選出される。今後の活躍が期待される注目の作家。

重厚なファンタジーがもたらす圧倒的な世界観からしか得られない栄養が、この世にはある。それは今生きている場所とはまるで異なる理で回る世界が存在するのだという確かな実感、出会ったことのない知らない世界に触れる愉悦。つまり、想像の翼をはためかせることで、一時でも現実の鎖から解き放たれここではないどこかを夢見て救われる魂があるということだ。受験、就活、残業……現実が重くのしかかってくる時こそファンタジー作品を手に取り、どうにかここまで生きてきた。そして今も。
そんな私にとって今シリーズはまさにうってつけ。歴史収集の旅をする聖職者に全てを記憶し口伝する鳥、襟巻を用いて戦う女性と大地を揺るがす巨大な古代象。ページをめくる度に出会うアジアンテイストな地名や当たり前のようにそこに存在する黒魔術、そして幽霊たちから漂う幻想的な世界観にうっとりと浸らずにはいられない。この世界に、あのバディに、また会えるなんて!ニー・ヴォの邦訳二作目となる本作。前作『塩と運命の皇后』に引き続き、聖職者チーの旅先での出会い、そこで語られる知られざる歴史の一面が描かれている。
