「0825」に私たちは殺され続ける

あるロヒンギャ夫婦の物語

今泉千尋

各所から応援の声続々!
ミャンマーのイスラム系少数民族「ロヒンギャ」が直面する過酷な現実。
9年の取材に基づく書き下ろし小説。

2017年8月、ミャンマーのある村が焼き払われた。ヌール、モハマド夫妻は、恐ろしい目にあいながらも子供たちを連れてバングラデシュの難民キャンプにたどり着く。しかしそこにも差別と暴力は存在する。望んだ場所で平穏に暮らしたいだけなのに、その願いは叶わない。ふたりはお互いを思い合うほどに、すれちがっていく――。9年にわたる現地取材を経て書き下ろされた、史実に基づく緊迫の物語。

2026年8月20日発売
880円(税込)
文庫判/304ページ
ISBN:978-4-08-743034-9

◆ロヒンギャとは◆

ロヒンギャとはミャンマーのイスラム系少数民族のことで、主に西部ラカイン州に居住する。何世代にもわたりその地に暮らしてきたが、ミャンマーでは「隣国バングラデシュから来た『不法移民』」と差別され、暴力や恣意的な逮捕・拘束、強制労働や土地・財産の収奪といった苛烈な迫害を受けてきた。また彼らの多くが「無国籍」の状態を強いられているため、就労や教育、医療などへのアクセスを制限されており、移動の自由もない。2017年には、8月25日に起きたロヒンギャの武装勢力「ARSA(アラカン・ロヒンギャ救世軍)」の襲撃事件をきっかけに、ミャンマー軍と仏教徒少数民族ラカイン人の一部がロヒンギャの居住地で軍事作戦を展開。同年9月24日までのわずか1ヵ月間で少なくとも6,700人が殺害され、女性たちは性的暴行の標的となり、彼らの土地が焼き払われた。このとき約75万人がバングラデシュに逃れて難民となり、9年を経たいまも避難生活を送るが、キャンプにも自由はなく、貧困や暴力、麻薬犯罪などの困難に直面してい
る。

【バングラデシュのロヒンギャ難民キャンプと登場人物】

【応援の声続々!】

いとうせいこう(作家・俳優・タレント)

差別される民族ロヒンギャの過酷な日々を描くリアルさ。まさか日本人記者によるものと信じられず、読みながら何度も著者名を確かめてしまったほどだ。

高野秀行(作家)

濁流に呑み込まれるように一気読みしてしまった。
体と心を丸ごともっていかれるような凄い作品だ。
徹底した取材に基づく奇跡的な作品。
圧倒的なリアリティと精緻な物語に驚嘆した。

藤元明緒(映画監督「ロストランド」)

世界の理不尽を前に、祈るようにページをめくった。涙が止まらない。

木村元彦(作家)

前駐ミャンマー日本大使が血税を使ってBBCで「ロヒンギャはベンガリ。虐殺についてミャンマー国軍は関与していない」と独裁権力におもねる官製ヘイトスピーチを続ける中、在野の作家が、私財を投じて取材を重ね、本書を書いた。真実はここにある。

根本敬(上智大学名誉教授)

長期化するロヒンギャ難民キャンプで何が起きているのか。あえて小説形式でこのことに迫った本作品は、キャンプの現場で起きている事実を基に、主に難民の女性たちの日常的苦難を描きだすことに成功している。著者が女性で、長きにわたってロヒンギャ女性とのあいだに深い信頼関係を築けたからこそ書き上げることができた作品だといえる。男性にはけっして見えてこない風景や悩みが次々に描き出され、背景にある深刻な民族対立や歴史的事実も正確におさえてある。読者を吸い込むように進むストーリー展開は、単なるヒューマン・ドラマに終始しない。この作品は新しい難民文学の登場を示唆しており、これまで私たちに見えていなかったロヒンギャ難民の女性たちが直面する苦しみと、それを乗り越えようとする彼女たちの活力を伝えてくれる秀作である。

【著者プロフィール】

今泉千尋(いまいずみ・ちひろ)

宮城県出身。2002年早稲田大学第一文学部卒業。12年国連平和大学メディアと平和構築修士課程修了(平和学修士)。出版社、国連などでの勤務を経てライターとして独立。紛争や難民をテーマに取材したルポを講談社クーリエ・ジャポン、ニューズウィーク日本版、AERA などで発表。2017年10月からバングラデシュ、ミャンマー、マレーシア、タイでロヒンギャの人々を取材している。