

『泡』
松家 仁之
自分の居場所はどこにもない。でもひとりでは生きていけない。
思春期のままならない心身をリアルに描き、昭和という時代の消せない記憶を活写した名作。
高二の春、薫は学校に行けなくなった。厳格な両親と対照的な大叔父の兼定を頼り、温泉と海水浴の町で夏を過ごすことに。兼定が営むジャズ喫茶を手伝いながら、不思議な魅力をたたえる店員の岡田やその女友達らと触れ合う。薫を見守る兼定は、なぜ縁のなかったこの地で暮らすのか。そこには戦争の落とす暗い影があった。昭和を舞台に描かれる、二度と来ない夏の日々。「最初で最後」の青春小説。
2025年10月20日発売
660円(税込)
文庫判/208ページ
ISBN:978-4-08-744825-2
【著者プロフィール】
松家 仁之 (まついえ・まさし)
1958年、東京生まれ。編集者を経て、2012年に発表した長編小説『火山のふもとで』で第64回読売文学賞を受賞。18年『光の犬』で第68回芸術選奨文部科学大臣賞、第6回河合隼雄物語賞を受賞。その他の小説作品に『沈むフランシス』『優雅なのかどうか、わからない』『天使も踏むを畏れるところ』。共著に『新しい須賀敦子』。