

地図と拳 (上)
小川哲
日露戦争前夜の1901年。満洲の広大な土地は、誰のものでもなかった。ロシアとの開戦の可能性を探るために海を渡った密偵・高木は、李家鎮という村に大量の石炭資源が眠ることを知る。ロシアの鉄道網拡大のために派遣された神父・クラスニコフ、馬賊を束ねる李家鎮の王・孫悟空……。「燃える土」をめぐり殺戮の半世紀を生きた彼らは、白紙の地図にどんな夢を描いたのか。第168回直木賞受賞作。
2025年6月20日発売
913円(税込)
文庫判/368ページ
ISBN:978-4-08-744777-4

地図と拳 (下)
小川哲
解説=深緑野分
1932年、満洲国建国。明男が建築学徒として携わった仙桃城は、立派な都市に発展した。一方、乱暴な支配に苦しむ地元住民との対立は激化。明男がダンスホールで出会った孫丞琳も、抗日軍の一人だった。リットン卿の調査を受け、細川は戦争構造学研究所を設立。十年先の未来を予測しようとするが……。人々はなぜ拳を振りかざし、戦争へと向かってしまうのか。圧倒的スケールで描き切る歴史×空想巨編。
2025年6月20日発売
913円(税込)
文庫判/384ページ
ISBN:978-4-08-744778-1

おもな登場人物たち
細川
戦争構造学研究所所長。
十年先の未来を予測することで、日本、そして人類にとって最善の道を模索する。
トレードマークは丸眼鏡。
須野
気象学者。
ロシアの地図上に描かれた実在しないはずの幻の島「青龍島」の謎を追って海を渡ることに。
明男の父。
須野明男
帝国大学の建築学徒。
〈李家鎮〉の都邑計画に携わり、「五族協和」の理想郷を目指す。
時間、温度、湿度、風力を道具なしに感知できる特殊能力の持ち主。
孫悟空
修行により、鋼の肉体を手に入れた男。
しがない馬賊から、一帯の炭鉱利権を掌握する〈李家鎮〉の王にまで昇り詰める。
孫丞琳
孫悟空の末娘。
生まれながらに右腕を不自由にさせた父を恨み、彼と彼の与する日本国を倒すため、抗日軍に身を投じる。
クラスニコフ
ロシアの鉄道網拡大のため派遣された神父。
〈李家鎮〉の教会に住む。
身寄りのない孫丞琳を保護し、彼女の育ての親となる。
【刊行・ナツイチ特別対談】
【著者プロフィール】
小川哲(おがわ・さとし)
1986年千葉県千葉市生まれ。2015年「ユートロニカのこちら側」で第3回ハヤカワSFコンテスト〈大賞〉を受賞しデビュー。17年『ゲームの王国』で第38回日本SF大賞、第31回山本周五郎賞を受賞。22年『地図と拳』で第13回山田風太郎賞、翌年同作で第168回直樹三十五賞を受賞。同年『君のクイズ』で第78回日本推理作家協会賞長編および連作短編集部門賞を受賞。その他の著書に『嘘と正典』『君が手にするはずだった黄金について』『スメラミシング』など。