

「死に方は、生き方だ。いちど死んでみせた小説家には、なにひとつ、怖いものなどないだろう。
その背中、ありがとうございます。」
桜木紫乃(作家)
二年後には八割死ぬ。病とは無縁だった作家が「血液の癌」を宣告され、骨髄移植を受けることに。血液型が変わり、外見のみならず精神も変貌した。しかしそれは地獄の始まりに過ぎなかった——。移植の影響で激痛を伴うGVHD発症、さらに間質性肺炎、脊椎四か所骨折へと到る治療の経過を観察し続けた作者自身による、満身創痍のドキュメンタリー小説。文庫ではコロナ禍を経ての現在までの経過を追記。
2025年3月19日発売
1,034円(税込)
文庫判/448ページ
ISBN:978-4-08-744749-1
【花村萬月の本】

『対になる人』
心理的トラウマ、DV、解離性同一性障害、PTSD……。
唯一無二の作家が現代人が抱えるテーマと対峙し、踏み込んだ小説。
札幌に引っ越してきた小説家の逸郎は、クラブで紫織と出会う。彼は紫織が多くの人格を内包する解離性同一性障害だと気づき、現れた人格に名前を付けて認識する。毅然とした「あかり」、高校生のような「さゆり」、死にたいと繰り返す「ひかり」……。壮絶な過去や、夫からのDVが明かされ、逸郎は五十もの人格との異常な日々に飲み込まれていく。圧倒的な生々しさで描かれる迫真のサイコスリラー。
2024年8月21日発売
1,320円(税込)
文庫判/560ページ
ISBN:978-4-08-744682-1

『GA・SHIN! 我・神』
神とは。宗教とは。善悪とは。
芥川賞作家による幻の傑作SF叙事詩!
東京の片隅でホームレスの謝花に拾われた少年、臥薪正太郎は500円玉を無限に生み出せる特殊能力を持つ。彼の力と触媒役の謝花を宗教組織に利用しようとする「高階組」幹部、榊原の謀略により、二人は沖縄へと導かれる。やがて対立する臥薪と謝花の戦いは神と地球規模にまで発展───。五感に訴えるディテール描写と想像を超えるスケール感で揉みくちゃにされるSF叙事詩。文字表現の到達点の極致。
2022年9月16日発売
968円(税込)
文庫判/424ページ
ISBN:978-4-08-744433-9

『花折』
ものを創るすべての人へ
性の萌芽、芸術の発見、人間の生と死──。
深淵を覗くうち、根源から見られている感覚に陥る小説。
鮎子は画壇の重鎮である父に英才教育を受けて育ち、東京藝大へ。利根川に臨む取手キャンパスで、裏山に住むイボテンという男と出会い、性に塗れた日々を過ごす。夏休みには実家に寄寓する小説家・我謝と沖縄へ。男を知り、取り込みながら画家として覚醒しようとする鮎子の変化を父は見抜いていた──。流麗な文体、混沌の描写、深奥の含意。ひとりの画家の人生を通し創作の本質に迫った長編小説。
2021年9月17日発売
836円(税込)
文庫判/392ページ
ISBN:978-4-08-744299-1
【著者プロフィール】
花村萬月(はなむら・まんげつ)
1955年東京都生まれ。89年『ゴッド・ブレイス物語』で第2回小説すばる新人賞を受賞し、デビュー。98年『皆月』で第19回吉川英治文学新人賞、「ゲルマニウムの夜」で第119回芥川賞、2017年『日蝕えつきる』で第30回柴田錬三郎賞を受賞。『風転』『虹列車・雛列車』『錏娥哢奼』『ヒカリ』『花折』『ハイドロサルファイト・コンク』『GA・SHIN! 我・神』『槇ノ原戦記』『対になる人』など著書多数。