妻から離縁の申し立てをするには、縁切寺に駆け込むしかない――。
夫の浮気に悩み、この世にたった二つの縁切寺の一つ、上州満徳寺へやってきたなつ。
だが、そこにいたのは夫の情女いろで⁉ 
憤るなつに、美しき尼僧・慈白は、ここで助け合って暮らすように言い……。
事情を抱えた女たちは、笑い泣き、時に励ましあいながら、人生の“雨宿り”の場で何を見つけるのか。
迷えるあなたへ贈る連作時代小説。

【登場人物紹介】

はく

上州満徳寺の尼。美しく聡明。「徳川のお姫様」だという噂がある。

えい

尼弟子。明るく朗らか。若いが男女の仲については一家言あり。

なつ

大工の夫の浮気に悩む十九歳の娘。江戸から駆け込んできた。

しず

小姑に寄生され、疲れきった三十三歳の女。婚家に置いてきた娘を案じている。

宇多うた

米問屋に嫁いだ十七歳。婚家の人々から命を狙われていると怯えている。

せい

一度離縁している二十三歳。慕っていた相手と再縁したにもかかわらず離縁を望む。

もん

町名主の夫を持つ十八歳。夫の暴力が酷く、逃げてきた。

著者情報

遠藤彩見(えんどう・さえみ)

東京都生まれ。1996年、脚本家デビュー。99年、テレビドラマ「入道雲は白 夏の空は青」で第16回ATP賞ドラマ部門最優秀賞を受賞。2013年、『給食のおにいさん』で作家デビュー。シリーズ化された同作の他に、『キッチン・ブルー』『イメコン』『みんなで一人旅』『二人がいた食卓』『左右田に悪役は似合わない』などがある。

カバーデザイン:高橋健二(テラエンジン)
イラストレーション:合田里美

好評発売中

遠藤彩見

みんなで一人旅

トラブルとトラベルは1文字違い!

憂鬱な社員旅行。問題続出の一人旅。悪夢のような出張……。ままならない旅路の果てに待ち受ける、予想外の結末とは? ほろ苦くも温かい、大人の旅物語7編。