荒地を沃野に拓け! 明治の大プロジェクト安積疏水事業の真実。
猪苗代湖の水を郡山へ送る日本初の土木事業を描く歴史小説。
明治10年、内務卿大久保利通は、猪苗代湖の水を郡山へ流す安積疏水事業を提案。没落士族救済のため、肥沃な農地を拓くという。大分出身の南一郎平を責任者にするが、奥羽山脈を貫く難工事の上に、癖のある男たちが次々と登場して紛糾。さらに大久保暗殺事件が起こる。南はオランダ人技師と協力し、工事を進めようとするも……。巨額の国家予算を投入した日本初の大プロジェクトを描く歴史小説。
2024年12月20日
発売968円(税込)
文庫判/344ページ
ISBN:978-4-08-744727-9
「何度もうるっとしながら、一気に読みました」
────歴史家・原口泉氏
明治の技術者たちは不撓不屈だ。後に琵琶湖疏水や那須疏水の開削にも従事した南一郎平は「日本三大疏水の父」と呼ばれた。
明治維新から間もないこの時期、幕末から維新にかけて起こった戊辰戦争の遺恨は凄まじい。
武士に利用された農民たちの怒りも収まってはいない。そんな状況の中、未来を見据えていた大久保利通の夢に賭けた男たちの姿は心躍る物語となった。
────書評家・東えりかさん(「青春と読書」1月号 書評より)
安積疏水と名付けられたその疏水は、明治政府による開発事業の第一号であり、琵琶湖疏水・那須疏水とともに日本三大疏水のひとつに数えられ、今も郡山市とその周辺地域を潤し続けている。
本書は、そんな安積疏水建設完遂までの物語である。
──と、なんだか「プロジェクトX」風な書き出しになってしまったが、これが実に興味深いのだ。事業そのものはもちろんだが、何より計画から完遂までの人間模様がとにかく読ませるのである。
────書評家・大矢博子さん(本書解説より)
主な登場人物
南一郎平
大分県出身の内務省技官
中條政恒
福島県庁の安積原野開拓担当者
奈良原繁
内務省御用掛、大久保利通の部下
阿部茂兵衛
郡山の生糸商人、開成社創設者
小林久敬
問屋場経営者、須賀川水路選定に奔走
山田寅吉
フランスで土木技術を学び帰国
山吉盛典
福島県令、大久保最後の対面者
【植松三十里が描くもう一つの明治時代】
英国人作家と通訳の青年、北への旅は困難を極め……。
対照的な二人が織りなす文明衝突旅を開国直後の日本を舞台に描く歴史小説。
三浦半島の下級武士の子・伊東鶴吉は、維新後に通訳となる。
父が幕末に函館へ行き生死不明のため、家族を養う身だ。
20歳となり、東北から北海道へ旅する英国人作家イザベラのガイドに採用された。
彼女は誰も見たことのない景色を求めて、険しき道ばかりを行きたがるが……。
貧しい日本を知られたくない鶴吉とありのままを世界に伝えようとするイザベラ。
対照的な二人の文明衝突旅を描く歴史小説。
2024年2月20日
発売858円(税込)
文庫判/304ページ
ISBN:978-4-08-744623-4
【著者プロフィール】
植松三十里(うえまつ・みどり)
静岡市出身。昭和52年、東京女子大学史学科卒業後、婦人画報社編集局入社。7年間の在米生活、建築都市デザイン事務所勤務などを経て、フリーランスのライターに。平成15年「桑港にて」で歴史文学賞受賞。平成21年「群青 日本海軍の礎を築いた男」で新田次郎文学賞受賞。同年「彫残二人」で中山義秀文学賞受賞。著書に「リタとマッサン」「イザベラ・バードと侍ボーイ」など多数。