【映画「月がみている」イントロダクション】

渡辺淳一の衝撃の問題作『シャトウ ルージュ』を娘・渡邉直子が女性視点で映画化

『失楽園』をはじめとする数々の小説で、その名を不動のものとする作家、渡辺淳一。映像化された映画、
ドラマも常にセンセーションを巻き起こし、大ヒットしてきた。そんな渡辺のビブリオグラフィの中でも、とり
わけ論議を巻き起こした一編がある。『シャトウ ルージュ』。没後12年。映画プロデューサーである娘、渡邉
直子が自らメガホンをとり本作を映画化した。“最近の男性が女性に寄り添わないので、ちゃんとしないと
女性はいなくなってしまうと発破をかけたくて書いた”と父が述べた小説に、女性ならではの視点を加え、
鮮やかな余韻を残す。渡辺文学の底辺に脈打つ、静かで確かな女性讃歌を掬いとり、21世紀を生きるわ
たしたちに手渡す新解釈。しかも、女性・男性いずれかに傾くことなく、それぞれの辛さ、不甲斐なさをフラ
ットに見つめ寄り添うことによって、観客一人ひとりに響き沁みわたる“切実なギフト”として昇華している。
人も羨むカップルでありながら、妻から性的な拒絶をされている夫が偽装誘拐の果て、フランスの城に妻
を監禁する——この衝撃的な設定は、映画鑑賞後、見事に覆る。夫パートと妻パートを両立=共棲させ、
原作タイトルにもある“城”というモチーフを現地ロケで可視化し、ナイーヴな物語を映画的な多様性へと導
く。毎熊克哉、小島梨里杏という主演ふたりがイノセンスあふれる熱演を見せ、黒木瞳、西岡德馬、吉田
羊、そしてヴァンサン・ペレーズら豪華な面々が脇を固め奥行きを拡げる。女性スタッフをメインに据えたチ
ーム編成も、日本映画としては画期的で、セックスを扱いながらも、輝きと解放感のある映像美は、わたし
たちのこれまでの固定観念を優しく解きほぐすだろう。
セクシャルなインパクトは、ただの入口に過ぎない。この“城”から出る時、観客はパートナーや家族、愛す
る人との関係性を真新しい気持ちで見つめ直すはずだ。

映画トリビュートアンソロジーが集英社文庫から発売決定!

映画トリビュートアンソロジー 月がみている

著者

村山由佳・池田奈津子・松田志乃ぶ・桜木紫乃

渡辺淳一氏の衝撃作『シャトウ ルージュ』を娘・渡邉直子監督が大胆に翻案した映画「月がみている」が11月に公開される。

物語の舞台はフランス。誰もが羨む順風満帆な結婚生活を送る克彦(毎熊克哉)と月子(小島梨里杏)夫婦。優秀な医師として信頼を集める克彦だが、妻の月子が自身の性的な欲求を受け止めない現状に不満を募らせていた。克彦は月子をフランスへと誘い出し、性的なレッスンを施す謎の“城“へと連れていく——。

映画のテーマである女性の生と性の解放、性と生の豊かさを女性作家たちが描く短編アンソロジーの刊行が決定。
人妻と出張ホストとの共犯者ともいえる繊細な関係を描く村山由佳さんの「罪の香り」、人気脚本家・池田奈津子さんが映画「月がみている」の裏設定を踏まえて描くifの物語「残月」、実力派作家・松田志乃ぶさんの企みに満ちた意欲作「三人婚 メナージュ・ア・トロワ」、出奔した母の人生を娘がインタビューする桜木紫乃さん「ドキュメンタリー『母』」。

映画にインスパイアされ生み出された多彩な作品が収録された、読み応え十分の一冊。巻末に渡邉監督のインタビューも収録。

【収録作品を一部noteにて特別公開】

村山由佳 「罪の香り」

池田奈津子 「残月」

松田志乃ぶ 「三人婚 メナージュ・ア・トロワ」

桜木紫乃 「ドキュメンタリー『母』」