作品制作・写真/金沢和寛
私は好きな本のジャンルとしてミステリを挙げることも多いのですが、恥ずかしながらつい先日までこの有名な作品を読んだことがありませんでした。その理由としては、とにかくこのボリューム、なんと864ページ! 手に取るのはなかなかハードルが高いな……と感じていたのですが、いざ読み始めてみると止まらなくなり、気がつくとものすごい勢いで読み終えていました。
1973年、大阪の廃墟ビルで質屋を経営する男が一人殺された、というところから物語が始まります。容疑者は次々に浮かぶが、結局真相はわからずに事件は迷宮入り。被害者の息子・桐原亮司と、「容疑者」の娘・西本雪穂は、その後、全く別々の道を歩んでいきますが、二人の周囲には幾つもの犯罪の形跡が見え隠れします。ただ二人が関わった証拠は何もないまま、19年の歳月が流れて……。
亮司と雪穂の19年を、二人以外の視点で断片的に切り取りながら描いていくのですが、様々な人物や出来事がつながっていく過程に引き込まれます。そして最初の質屋殺しの事件の真実が最後の章で明かされる流れはまさに圧巻……! その真実はかなり重くて苦しいものですが、外側からしか描かれない亮司と雪穂の内面に少し近づけたような気がしました。また『白夜行』というタイトルの意味もより深く理解できます。
ミステリとしての面白さはもちろん、壮大なストーリーを読んだ……という満足感もたまりません。読み終えたあとも、描かれていない二人の心情に思いを馳せたり、19年のその後を妄想してみたり……こんなに長いページを読んだのに、まだまだ読み足りないような気持ちになりました。
また販売担当視点では、驚異的な売上を記録し続けている、という意味でも素晴らしい作品です。現在なんと累計253万部突破! 20年以上前に発売された書籍で、現在もこのようなペースで売れ続けている作品はなかなかありません。数字からも、時代を超えて読まれる本当の名作だということを感じさせられる1冊です。ボリュームに怯まず、ぜひお手に取っていただきたいと思います!
- よっしー
- お酒より甘味派、特に抹茶スイーツが好物。
家ではベッドに寝転がって本を読んだり、お風呂でのぼせるまでYouTubeをみたりとのんびり過ごしがちだが、仕事はきっちり早めに進めておきたいタイプ。 - ミステリ、ファンタジー、アツいスポーツもの、心温まるヒューマンドラマなどの作品が好み。
幼いころから図書館っ子で大学時代は書店アルバイト、そして文庫の販売担当になった筋金入りの本好き人間。
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2023.09.20 きのうのオレンジ 藤岡陽子 著
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2023.01.20 白夜行 東野圭吾 著