なべどんオススメの本
『東京ロンダリング』 原田ひ香 著
作品制作・写真/金沢和寛
突然ですが皆さんは「事故物件」という言葉にどんなイメージがありますか?
「なんとなく怖い」、「家賃が破格」、「幽霊が出そう」などでしょうか?
今作の主人公であるりさ子は、そんな事故物件を1か月ごとに転々とするという一風変わった仕事をしています。事故物件というのは告知義務もあり、往々にして通常の物件よりも入居者が決まりにくいので、持ち主も不動産会社も頭を悩ませます。しかし一度でも誰かが住むと、法的にその部屋は事故物件として扱う必要がなくなります。そのため、彼女のように賃貸物件をロンダリング〈浄化〉する仕事が存在するのです。
31歳で離婚し、家もお金もないりさ子が偶然たどり着いたロンダリング〈浄化〉という仕事。「いつもにこやかに愛想よく、でも深入りはせず、礼儀正しく、清潔で、目立たないように。そうしていれば、絶対に嫌われない」というのは、彼女をこの仕事にスカウトした不動産会社の社長から言われた心構え。誰記憶にも残らないように生活することがロンダリングの仕事には求められるのです。
すべてを失い、孤独で無気力な日々を過ごし、人付き合いを煩わしく思うりさ子でしたが、人との出会いによって自身の心も浄化されていきます。つまり本作は、一人の女性の人生再生の物語。ここだけ読むとありふれた内容のようですが、前述したとおり彼女は渡り鳥のように様々な事故物件に住む仕事をしており、ありふれた内容になるはずがありません。どんなふうに人生を再生するのか。ぜひ皆さんご自身で手にとってご一読いただければと思います。
プロフィール
- 宣伝担当 なべどん
- 本と野球を愛する宣伝担当。しかし最近は子育てに追われてどちらの時間もあまりとれないのが悩みの種。
- 好きな本のジャンルは特になし。ファンタジー、ミステリー、恋愛、日常など面白ければなんでも好き。電車の中で本を読んでいる人を見ると嬉しくてニヤニヤしてしまう。
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2023.5.19 さいはての家 彩瀬まる 著
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2022.9.16 キッチハイク! 突撃! 世界の晩ごはん 〜アンドレアは素手でパリージャを焼く編〜 山本雅也 著
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2022.5.20 平成犬バカ編集部 片野ゆか 著
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2021.12.17 東京ロンダリング 原田ひ香 著
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2021.9.17 文庫版 書楼弔堂 破曉 京極夏彦 著