担当者からのオススメ!

Recommendation

販売担当 シマシマ オススメの本 『カティンの森』 アンジェイ・ムラルチク 著/工藤幸雄 久山宏一 訳
販売担当シマシマ オススメの本

作品制作・写真/金沢和寛

今回、オススメするのはアンジェイ・ムラルチク著『カティンの森』です。

第二次世界大戦時、ポーランドで起こった「カティン事件」にて虐殺されたアンジェイ・フィリピンスキ少佐の帰りを戦後待ち続ける母ブシャ、妻アンナ、娘ヴェロニカの物語。2007年に巨匠アンジェイ・ワイダ監督により製作された同名映画の原作です。

まず、「カティン事件」とはなにかについて触れておきたいと思います。「カティン事件」とは1939年ドイツと不可侵条約を結んだソ連がポーランドに侵攻し、旧ポーランド東部地域を侵略、ドイツとポーランド領土を分割。約15,000人に及ぶポーランド人将校を捕虜収容所に捕え、そのうちの1万数千人を1940年4月頃に虐殺し、カティン(現ロシア共和国西部スモレンスク近郊)の森をはじめ3ヶ所に遺体を埋めた、とされる事件です。その後1941年6月、ドイツが条約を破棄してソ連に侵攻、カティンの森で虐殺されたポーランド人数千人の遺体を発見します。ドイツは「カティンの森で発見された数千の遺体はソ連により1940年4月頃殺害された」と結論付けますが、ソ連は、ドイツ軍が1941年秋に虐殺したと主張し、ソ連・ドイツの主張が真っ向から対立します。

物語に話を戻すと、舞台は第二次大戦後ソ連の統治下に置かれたポーランド。戦前の最後の便りから数年、アンジェイ少佐の帰りを待ち続ける3人の家族は儚い希望を持ちつつも、彼がカティン事件の犠牲者であることを認め、現実を受け入れていこうとします。一家はカティン事件を生き永らえたアンジェイの部下ヤロスワフ大佐や戦時中パルチザン運動の戦士でもあった娘ヴェロニカのボーイフレンド、イェジの協力などを得つつ、アンジェイがカティン事件の犠牲者である証拠や遺留品を探し求めていきます。しかし、ソ連統治下にある政府はカティン事件があったという事実自体を封殺しようという体制。情報に近づくたびに政府や秘密警察からの圧力を受け、協力者の2人は逮捕までされる事態に。関わる人がみな姿を消し、真実を知ろうとするだけでここまでの結果となってしまうのか、というところで物語はクライマックスを迎えていきます。

つい数ヶ月前、ウクライナのブチャという町で罪のない多くの一般人が虐殺される痛ましい事件が起きました。ロシアは多くの証拠や動画を突きつけられても虐殺はでっちあげだと主張しています。まさに歴史は繰り返されるという現実をまざまざと見せつけられています。これだけSNSや情報発信の手段が発達した時代においてもこのような主張ができてしまうことには驚いてしまいます。歴史の針が逆戻りしつつある今こそ手にとって頂きたい1冊です。

プロフィール
  • シマシマ
  • ワインが、お酒が好きすぎてワインエキスパートの資格を取ったノムリエ販売担当。本よりお酒のウンチクを語る時の方が饒舌??
  • 男くさい、涙を誘う本がフィクション・ノンフィクション問わず好み。令和の時代に昭和からアップデートされていない自分を顧みて、他のジャンルの食わず嫌いはいかんと思う日々。旅行に出かける前にたくさん本を買い込んで荷物がついつい増えてしまうタイプ。
過去のオススメ!
  • 2023.03.17new 23分間の奇跡 ジェームズ・クラベル 著/青島 幸男 訳
  • 2022.07.20 カティンの森 アンジェイ・ムラルチク 著 / 工藤幸雄 久山宏一 訳
  • 2022.04.21 腐葉土 望月諒子 著
  • 2021.12.03 存在の耐えられない軽さ ミラン・クンデラ 著 / 千野栄一 訳
  • 2021.07.02 しのびよる月 逢坂 剛 著
  • 2021.02.19 アポロンの嘲笑 中山七里 著
  • 2020.10.21 日々の100 松浦弥太郎 著
  • 2020.06.05 M8 エムエイト 高嶋哲夫 著
  • 2020.02.20 めぐりあいし人びと 堀田善衞 著
  • 2019.10.18 オーパ、オーパ!! モンゴル・中国篇 スリランカ篇 開高 健 著
  • 2019.06.21 水無川 小杉健治 著
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