作品制作・写真／金沢和寛

「あなたの家のごはん、食べさせてもらえませんか？」。見ず知らずの人に突然そう言われたら、あなたならどうしますか？　こころよく家に招き入れて自慢の手料理を振る舞うでしょうか。かつてのテレビ番組の人気コーナーのように、戸惑いつつも一緒に食卓を囲むでしょうか。あるいは事件に巻き込まれる可能性を考えて、聞こえないふりをしてやり過ごすでしょうか。
今回僕が紹介するのは『キッチハイク！　突撃！世界の晩ごはん　〜アンドレアは素手でパリージャを焼く編〜』です。タイトルにあるとおり、著者は世界の食卓に突撃して各国の家庭料理を食べつくします。旅先の道端で出会った人はもちろん、友達の紹介やFacebook、Airbnbを介して突撃を繰り返します。その数なんと60軒以上。とんでもない行動力です。メキシコシティではバッタの漬け物を食べてコロナビールで乾杯、バレンシアで飲むオルチャータというソウルドリンク、済州島では平屋の裏で採ったエゴマの葉を大量に入れたヘムルテンジャンチゲを味わいます。
そして本作は、世界中の人々との出会いの記録でもあります。著者が食した料理はもちろん、その家に住む家族もカラー写真で掲載してあるので、よりリアルに現地の生活が感じられます。それは観光地をまわるツアーでは決して見ることができない、その国、その家族の本物の日々の営み。個性豊かな人々とのエピソードも読みごたえたっぷりです。本作を楽しんだあとは、ぜひ姉妹編『キッチハイク！　突撃！世界の晩ごはん　〜ソフィーはタジン鍋より圧力鍋が好き編〜』でも「もぐもぐ・ザ・ワールド」をご堪能ください！