なべどんオススメの本
『さいはての家』 彩瀬まる 著
作品制作・写真/金沢和寛
今回オススメするのは、彩瀬まるさんの『さいはての家』。郊外に建つ古い一軒家が舞台の連作短編集です。庭のある、古びた何の変哲もないひとつの家に、入れ替わりに住んでいく人々の5つの物語が描かれています。
「家」というのは究極のプライベート空間。たまに帰省すると、家族や田舎の風景はもちろんなのですが、自分が長く過ごした家そのものが心を落ち着かせてくれる気がします。また、戸建てなのかマンションなのか、持ち家なのか賃貸なのか、どの地域に住んでいるかなど、「家」のことを知ると、その人の生活や考え方がわかるような気がします。
話を戻しますと、この作品の舞台である古い借家には、不思議と様々な事情を抱える“訳アリ”な人ばかりが暮らします。不倫の末に駆け落ちした男女、幼馴染の男性2人、健康教室を開く謎の高齢女性、親の決めた結婚から逃げてきた女とその妹、そして妻子を残して単身赴任で越してきた男。それぞれがそれぞれの事情で、吸い寄せられるようにこの古びた一軒家に辿り着きます。ところが、新たな一歩を踏み出そうともがく彼らに、これまでの人生が重くのしかかります。人生につまずいて辿り着いたこの家で暮らし、彼らはどのように変わったのか。あるいは変わらなかったのか。かすかな光をつかむことができたのか。ぜひ手に取ってご一読ください。
プロフィール
- 宣伝担当 なべどん
- 本と野球を愛する宣伝担当。しかし最近は子育てに追われてどちらの時間もあまりとれないのが悩みの種。
- 好きな本のジャンルは特になし。ファンタジー、ミステリー、恋愛、日常など面白ければなんでも好き。電車の中で本を読んでいる人を見ると嬉しくてニヤニヤしてしまう。
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2023.5.19 さいはての家 彩瀬まる 著
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2022.9.16 キッチハイク! 突撃! 世界の晩ごはん 〜アンドレアは素手でパリージャを焼く編〜 山本雅也 著
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2022.5.20 平成犬バカ編集部 片野ゆか 著
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2021.12.17 東京ロンダリング 原田ひ香 著
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2021.9.17 文庫版 書楼弔堂 破曉 京極夏彦 著