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Recommendation

販売担当おみこしオススメの本 『梟の一族』 福田和代 著
販売担当おみこしオススメの本

作品制作・写真/金沢和寛

「サイエンス×忍者 アクションエンターテインメント」
何と心惹かれるキーワードでしょうか。私たちが好きな要素全部乗せといった豪華さです。
私個人としては、影分身の術を多用する「だってばよ」が口癖の某金髪主人公に、大変お世話になってきた身でもある為、「忍者」がテーマの作品は特に大好物です。
その上で今回ご紹介させていただく『梟の一族』では、我々が過ごしている現代の日本が舞台となります。

主人公である16歳の少女・榊史奈は「梟」と呼ばれる一族の末裔で、彼女らは人里離れた場所で目立たぬよう生活していた。ある日一族の集落は突然襲撃され、史奈はただ一人の生き残りとして逃げ延びていく。

この導入部分を読み終わった段階で既に、本作の世界観と史奈の心情へ一気に引きずり込まれていることに気付きます。描写のリアリティに展開のスピード感が合わさって、圧倒的な臨場感が生まれているのです。
絶望的な状況に立たされて尚、冷静さを失わずに真実を追い求めていく史奈の姿は、読者に大きなエネルギーと勇気を与えてくれるのではないでしょうか。それを象徴するように描かれたカバーイラストは、史奈の凛とした美しさ・強さ・清廉さを完璧に引き出しているかと思います。2022年の本屋大賞受賞作『同志少女よ、敵を撃て』、『六人の嘘つきな大学生』のカバーも手掛けた、雪下まゆさんのイラストからは、本書に吸い寄せられるような強烈な魅力が発せられています。
読み進めていくと、やがて物語は襲撃の黒幕や、一族の秘密、史奈自身のルーツなど、様々な真実・核心に向かって急加速していくこととなります。ネタバレを避ける為、多くは書けませんが、作中で鍵となる「眠らない」という一族の体質、これこそが本作の設定や面白さの厚みを支えていると言っても過言ではありません。「忍者」という、時としてオカルト的に捉えられるような題材を、本作は科学的なアプローチから解き明かし、身近でありながらもミステリアスな存在として描き切っています。
以上のことから『梟の一族』はSF・アクション・ミステリー・サスペンスと、非常に幅広いジャンルの魅力を揃えた傑作であり、人を選ばず楽しめる内容となっております。私も、もし眠らないで生活することができたなら、世界中のまだ見ぬ物語を存分に楽しめるだろうな、と少し羨ましく感じました。しかし同時に、時間に限りある一生だからこそ、偶然に出会えた作品には特別な意味と魅力が宿るのだと信じ、今日も私はコンテンツに手を伸ばすのだと思います。

プロフィール
  • おみこし
  • 学生時代はアメフトとアカペラを兼部していた熱血漢。オフでは運動全般、カラオケ、飲み会をこよなく愛するお祭り男。しかしてその実体はエンタメで白米3合を平らげる雑食系男児。
  • サスペンス、SF、ダークファンタジーが大好物。物語の世界観や、意外な展開に翻弄されていたい性分。TVゲームの腕前や知識、洋画への愛には自信あり。作品に自分ごと没入していくタイプ。文芸という大海を冒険・開拓していくためにも日々奮闘中!
過去のオススメ!
  • 2023.07.21new 隣はシリアルキラー 中山七里 著
  • 2022.11.18 梟の一族 福田和代 著
  • 2022.06.17 早朝始発の殺風景 青崎有吾 著
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