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『淋しいのはお前だけじゃな』 枡野浩一 著
真夜中のファミレスにいる常連客は、ファミリーがレスってわけか!
私と枡野浩一さんとの出会いは、都会になりきれない田舎にある大学に通っていた頃、現在いちご農家をやっている友人のブログに書かれた言葉でした。
「絶倫の バイセクシャルに変身し 全人類と 愛し合いたい」
私は当時というよりは今も昔も絶倫でも、もちろんバイセクシャルではありませんでしたが、この言葉には、自分の一重まぶたが二重になるほど衝撃が走りました。
究極の博愛主義
といっても良い凄まじい内容が、リズミカルな短歌に乗ってもたらされたのです。この
素晴らしいギャップ
がきっかけで「作者は誰だ」ということになり、めでたく
枡野浩一さんの作品に出会った
のでした。
そして、今回紹介させていただく
『淋しいのはお前だけじゃな』
は何気ない日常を短歌の五・七・五・七・七が切り取っていきます。
ただ、短歌の紹介だけではなく、まえがきにあるように
「短歌の成立事情」
も書かれています。解説ではなく、あくまでも成立事情です。読者の皆さんはその成立事情から自身の実体験を照らしあわせつつ、短歌を楽しむことができます。
たとえば一部紹介するとこういう作品があります。
「階段にすわって 朝を待ちながら ゆうべの夢を うちあけ合った」
(p15)
作者の枡野さんがシャッターの閉まった駅の階段に腰かけて、オフィスで働いていた時に見た昔の夢の話を知り合いにして、
「学生みたいだ」と苦笑しながら始発電車を待っていた
。そんな背景で出来た話です。
なりたい自分になれない
自分。
届けたくても届かない思い
。そして淋しいことに気づきさえしなかった日々。最近の言葉を借りるならばモラトリアムの時期に
「こじらせた」
経験のある方、あるいは現在進行中で
「こじらせている」方には身近な例として追体験できる
と思います。
それと個人的には『淋しいのはお前だけじゃな』というタイトルも、最後に「い」をつけるかどうかで、意味がまったく異なるという言葉遊びも、
グッと来るタイトル
だと思います。
最後にもうひとつちょっと笑った短歌をご紹介します。
「辞書をひき バレンタインが 破廉恥の隣にあると 気づいている日」
(p32)
「まさか!」と思い、『集英社国語辞典 第3版』でひいてみたら、やっぱりバレンタインは破廉恥の隣にありました。
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スガイッち
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クールな酔っ払い系 宣伝担当
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とりあえずビールにはじまり焼酎、ワインとアルコールランプ以外は何でもアリ。酒にまつわる伝説多数。夢は、ウイスキーの似合うハードボイルドな大人の男。趣味は映画鑑賞とジャイアンツ。最近はまっているのは、海外探偵小説。今日も、オシャレな白い靴をはいて面白い本をハンティングする毎日。
2014.11.20
貴族探偵
麻耶雄嵩 著
2014.04.18
結婚は人生の墓場か?
姫野カオルコ 著
2013.11.20
淋しいのはお前だけじゃな
枡野浩一 著
2013.03.19
追想五断章
米澤穂信 著
2012.01.20
とんまつりJAPAN 日本全国とんまな祭りガイド
みうらじゅん 著
2012.01.20
初恋温泉
吉田修一 著
2011.09.16
叡智の断片
池澤夏樹 著
2011.02.18
ムボガ
原 宏一 著
2010.10.20
空をつかむまで
関口 尚 著
2010.6.25
マイナス・ゼロ
広瀬 正 著
2010.2.19
ガダラの豚 I II III
中島らも 著
2009.12.16
よもつひらさか
今邑 彩 著
2009.10.20
金のゆりかご
北川歩実 著
2009.2.20
おれは非情勤
東野圭吾 著
2008.11.20
東京バンドワゴン
小路幸也 著
2008.07.18
夏と花火と私の死体
乙一 著