北上次郎さんは、2023年1月19日永眠されました。
謹んでご冥福をお祈りいたします。
「いきなり文庫! グランプリ」第6回の優秀作は、赤松利市『東京棄民』に決定!
- 北上
- それでは、次の参考図書にいきましょう。打海文三『裸者と裸者』。ええと、これは『愚者と愚者』、そして『覇者と覇者』と続いて、最後は未完?
- 吉田
- そうですね『覇者と覇者』は作者急逝のため未完のままで刊行されました。その3作が「応化クロニクル」と呼ばれているものなんですが、もう、なんといっても打海文三さんの最高傑作! 近未来の日本、内戦状態の日本を描いた大傑作です! 今回読み返してみてもちっとも古びていないどころか、新鮮。
- 江口
- 異論ありません。すごい作品です。
- 吉田
- 打海さんは『されど修羅ゆく君は』もいいですよね。13歳の姫子と、60歳の探偵ウネ子が出てくるやつ。北上さん、新刊のときに絶賛してたじゃないですか。
- 北上
- 本当?
- 吉田
- 人物造形が抜群であると絶賛してましたよ!
- 北上
- 覚えてないなあ。
- 江口
- もしかすると、『裸者と裸者』の文庫解説を書いたことも忘れていますか?
- 北上
- おれが書いたの? (解説を確認して)あ、本当だ。
- 吉田
- 忘れないでください!(笑)この『裸者と裸者』はもちろん、「応化クロニクル」は今こそ読まれるべき作品ですよ。18年前に、既にここまで深くジェンダー問題を描いていたとは、と改めてこの作品の凄みに触れた気がしました。
- 北上
- それでは参考図書の最後、花村萬月『GA・SHIN! 我・神』。これはどうでしたか?
- 吉田
- 花村さんの作品を読むのは久々だったんですが、そうか、花村さんは芥川賞を受賞した作家なんだと思いました。つまり、純文ですよねこれ。ただ、『東京棄民』も『空とセイとぼくと』も、この『GA・SHIN! 我・神』も、ホームレスが出てくるので、比較するにはいいかなと。
- 北上
- あのね、何を描いているかじゃないんだよ。どう描いているかなんだよ。『GA・SHIN! 我・神』は明らかに文学で、『東京棄民』の参考図書にするには無理がある。にもかかわらず、これを参考図書に選んだ江口君の弁を聞きましょう。
- 江口
- 面白かったもんで……。たしかに「文学」です。私もそう思います。ホームレスを物語の出発点にしながらも、書き手が代わるとこんなにも変わるんだという点と、荒唐無稽な話なのにリアリティがあって突き抜けていました。そういう意味で違いが出たらいいのかな、と考えました。
- 吉田
- なるほど。
- 北上
- というところで、『東京棄民』に話を戻していきますが、あとは何かありますか。
- 吉田
- 最底辺にいる人たちが助け合って生き延びるのではなくて、そんな状況の中でも地位というかランクが出来てしまう、という残酷な一面が描かれていて、そこは巧いな、と思いました。
- 江口
- 面白くてページを捲(めく)る手が止まらなかったんですが、赤松さんだし突き抜けた感じを期待しすぎたかもしれません。もっと突き抜けてほしかったという思いは残りますよね。
- 吉田
- たしかにそうですね。辻褄(つじつま)があわなくても、強引でもいいから、赤松さんには、もっと破天荒な物語が描けたのでは、と思ってしまいました。。それと最後にひとつだけ、いいですか。
- 北上
- なに?
- 吉田
- 小説の評価とは関係がないんですが、文庫カバーにマスクの写真が載ってますよね。
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