アラーキーオススメの本
『無伴奏』 小池真理子 著
撮影協力:名曲喫茶ライオン 03-3461-6858
少し前になりますが、「壁ドン」が流行っていました。草食男子全盛(?)の昨今、少々強引なくらいの男性が求められているからでしょうか。
本作品は、「愛されていない、ということがわかっていたくせに、私は彼が好きで好きでたまらなかった」という17歳の女性・野間響子が主人公。
1960年代、学園紛争、デモ、フォーク反戦集会が盛んに行われていた仙台が舞台。多感で不良っぽい女子高生の響子は、喫茶店で出会った堂本渉・21歳に恋に落ちる。渉は男からも女からも愛される、不思議な雰囲気の大学生。どことなく儚げで、とても壁ドンなんてしなさそうです。ですが安心してください、詳しくは言えませんが草食男子ではありません。少し強引なところもあるくらいですので、知的タイプが好きな方も、壁ドンタイプが好きな方も、きっとみんな渉のトリコになります。
渉の友人、関祐之介と、その恋人・エマを含めた4人を中心にストーリーは進んでいきます。この4人の関係性が微妙で、甘い男女の恋愛模様も描かれつつも、もろくて、危険で、切なくて、ずっと仲良しではいられないだろうな、単純なハッピーエンドでは終わらないだろうな、という感じが読んでいてヒシヒシと伝わってきます。もし4人に壁ドンなんてしたら、あっという間に崩れてしまいそうな関係です。
そしてその予感はある事件となって、当たってしまいますが、それは読んでのお楽しみに。壁ドン級の衝撃です。
本作は今年3月26日公開で、映画化されます。正直、本好きな身としては好きな作品が映像化されるとき、原作と変わってしまっているんじゃないかとちょっと身構えてしまうのですが、『無伴奏』については映画が非常に楽しみです。この表現するのが難しい4人の関係性は、映像でも見てみたい。小池真理子さんの描写が素晴らしいからこそ、映画では違う角度から、違う見え方で表現されるのでは、というワクワク感が止まりません。朝井リョウさんの『桐島、部活やめるってよ』のときもそうでした……! 成海璃子さん、池松壮亮さん、斎藤工さん、と出演者も豪華ですので小説と併せてぜひ、ご覧ください。
プロフィール
- アラーキー
- 常に何か食べてる宣伝担当
- 大学で専攻していたのが「ラオス語」というだけで珍しがられ、就職戦線を乗り切った30代。食べ物も本も好き嫌いはなくて何でも好き。見たことのない食べ物があればとりあえず食べ、タイトルやカバーが良いと思った本はとりあえず買う。趣味は秘境駅巡りと野球観戦(カープファン)とバドミントン。
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2021.7.15 ナツイチ2021
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2021.3.19 辺境の怪書、歴史の驚書、ハードボイルド読書合戦 高野秀行/清水克行 著
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2020.11.20 名も無き世界のエンドロール 行成 薫 著
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2020.6.19 ナツイチ2020
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2020.3.19 あのこは貴族 山内マリコ 著
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2019.11.20 ひとよ 長尾徳子 著/原作・桑原裕子
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2019.7.19 慈雨 柚月裕子 著
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2019.2.20 みかづき 森 絵都 著
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2019.2.1 我が家のヒミツ 奥田英朗 著
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2018.12.7 根本陸夫伝 プロ野球のすべてを知っていた男 髙橋安幸 著
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2018.07.20 恋するソマリア 高野秀行 著
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2018.01.19 オトコの一理 堂場瞬一 著
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2017.03.17 桜のような僕の恋人 宇山佳佑 著
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2016.11.18 全一冊 小説 上杉鷹山 童門冬二 著
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2016.06.23 チア男子!! 朝井リョウ 著
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2016.02.19 無伴奏 小池真理子 著
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2015.11.20 狭小邸宅 新庄 耕 著