出版社に勤務し、宣伝部員として15年以上、本や雑誌の宣伝に携わってきましたが、全世界の小説の中で一番好きなタイトルを一冊だけ挙げて、と言われたら「童門冬二先生の『全一冊 小説 上杉鷹山』です」、と答えます。本当に、本当にオススメです。
江戸時代屈指の名君と言われ、米沢藩の藩政改革と財政再建に取り組み、「なせばなる、なさねばならぬ、なにごとも」の名言を残し、ケネディ元アメリカ大統領が「ウエスギ・ヨーザンは、私の最も尊敬する日本人」と言った、などなど、上杉鷹山について語り始めたらキリがありません。
ですが上杉鷹山をあえて一言で表すと、それは「愛」の人なのです。
江戸時代は、士農工商の身分制度がはっきりと存在していて、当時の社会秩序を支配していました。「改革とは、結局、民を苦しめて、藩のおえら方がぜいたくをするためのもの」だったとも言える時代です(現代でも思い当たる節が多々ありますが)。そんな中、鷹山は、「藩主は藩と領民の安全と繁栄のためにある」のであって「藩主も藩も、いわば、領民に養われているのである」と考え、領民を国(藩)の宝とし、非常に大切にしました。藩政改革を行うにあたり、それを実行する藩士や、痛みをおぼえなければならない人々へは強く愛をもって接したと言われています。ただそれでいて人情一辺倒の人ではなく、柔軟な思考と果断な行動力をもっていたそうです。
どんなことでも行き詰ってくると、人のせいにしたり状況のせいにしたりしがちです。鷹山は他人へのいたわり、思いやりを忘れず、それでいて民のために断固とした改革を推進しました。
みなさんも、家族がいたり、何らかの組織に属しているかと思います。彼の生き方は、サラリーマンや企業家の方はもちろん、政治家だろうと、家族を率いるお父さん・お母さんだろうと、学校の部活を率いるキャプテンだろうと、必ず何かの参考になると確信します。
ちょっと厚めですが、勇気をもってまずは第1章(19ページ)まで読んでください。鷹山の人となりが少しわかります。その後は、藩のひどい状況をどう改革していくのか、続きが気になってやめられなくなります!
- アラーキー
- 常に何か食べてる宣伝担当
- 大学で専攻していたのが「ラオス語」というだけで珍しがられ、就職戦線を乗り切った30代。食べ物も本も好き嫌いはなくて何でも好き。見たことのない食べ物があればとりあえず食べ、タイトルやカバーが良いと思った本はとりあえず買う。趣味は秘境駅巡りと野球観戦(カープファン)とバドミントン。
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