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『沖縄。人、海、多面体のストーリー』 刊行記念座談会 ――復帰50年、「沖縄を書く」ということ
ジュンク堂書店那覇店の集英社文庫の棚の前で。手前から森本浩平氏、松永多佳倫氏、江口洋。

『沖縄。人、海、多面体のストーリー』 刊行記念座談会
――復帰50年、「沖縄を書く」ということ

森本浩平×松永多佳倫
進行:文庫編集部 江口洋
構成・文:宮田文久


江口
3年ぶりに行動制限のないGW、その連休直前に、私たち集英社文庫チームは那覇にお邪魔しております。『沖縄。人、海、多面体のストーリー』の編者である森本浩平さん、その一編として収録されたノンフィクション「背中の傷と差別」の筆者である松永多佳倫さんと一緒に、このアンソロジーの面白さ、そして沖縄を書くということについてお話ししていきたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。
森本
改めまして、ジュンク堂那覇店店長の森本といいます。兵庫の生まれで、2009年に那覇店がオープンするタイミングで、大阪の店舗から沖縄へ移ってきました。今回はそうした地元書店人の目で、アンソロジーを編んでいます。よろしくお願いします。
松永
作家の松永多佳倫です。生まれは岐阜で、東京で20年間編集者をやっていたんですが、東京にボロ負けして2009年に沖縄へ逃げ渡り、現在まで那覇に住んで執筆活動をしています。よろしくお願いします。
江口
『沖縄。人、海、多面体のストーリー』が生まれることになった、その前段にすこし触れさせてください。2022年の5月で、集英社文庫は創刊45周年。おかげさまで、これまで6500タイトル以上を刊行することができました。
松永
もっと長くやっているような印象がありますね。
江口
実は文庫のレーベルとしては、比較的新しいほうなんです。1977年創刊なのですが、その5年前の、1972年5月15日が沖縄返還の日。返還50周年にあわせて、集英社文庫の創刊45年企画の一環で、沖縄を描いた小説やノンフィクション作品を集めて、アンソロジーを編めないだろうか……というのがすべてのスタートでした。そこで森本さんに編者をお願いして、全部で10本選び、並べていただきました。沖縄の作家の方による小説が3本、県外の作家の方が沖縄を舞台に書いた小説が4本、ノンフィクションが3本という構成になっています。
森本
沖縄県内と県外の書き手の方を分けたという話は、この座談会でも度々触れることになると思いますが、沖縄と県外というのは、まったく意味合いが異なるということが強く実感されるんです。沖縄では古くから独自の出版文化が栄え、発展してきました。小説は「沖縄文学」として確立されている。目次はあえて分けて並べるようにしました。
プロフィール

森本浩平(もりもと・こうへい) 1974年生まれ。兵庫県加古川市出身。2009年にジュンク堂書店那覇店店長となる。
12年から大阪・千日前店店長を務めたのち、16年那覇店店長に再任、現在に至る。
沖映通り商店街振興組合理事。「沖縄書店大賞」「ブックパーリーOKINAWA」に携わり、「この沖縄本がスゴい!」賞を創設した。沖縄県内の読書普及に努め、これまで多数のメディアで本の紹介をしてきた。今回は編者として、巻末に「編者のことば」を寄稿。

松永多佳倫(まつなが・たかりん) 1968年岐阜県生まれ。琉球大学卒業。出版社勤務を経て、2009年8月より沖縄在住。
スポーツノンフィクションを始めとする著作を精力的に執筆。
16年『『沖縄を変えた男―裁弘義 高校野球に捧げた生涯』が第3回沖縄書店大賞を受賞。
著書に『まかちょーけ 興南 甲子園春夏連覇のその後』『偏差値70からの甲子園』『善と悪 江夏豊のラストメッセージ』『事情最速の甲子園 創始学園野球部の奇跡』『最後の黄金世代 遠藤保仁』『確執と信念 スジを通した男たち』など。

江口 洋(えぐち・ひろし) 集英社文庫編集部元編集長。このアンソロジーの企画立案者。

沖縄。人、海、多面体のストーリー
南国の楽園として人気の反面、米国統治から復帰して50年、未だ戦争の影響が残る現実。見る人、立つ位置により全く違う一面を見せる沖縄は、これまでどのように書かれてきたのか。沖縄初の芥川賞作家・大城立裕の作品を始めとする沖縄文学から、県外作家が沖縄を描いた小説、さらにはノンフィクションまで。沖縄の50年に光を当てる10編。この土地と人の持つパワーを感じ、新たな価値観が得られる一冊。

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