- 『北上症候群』いぬじゅん(実業之日本社文庫GROW)
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神戸に住む琴葉がある朝出社すると会社は倒産。札幌にいる遠距離恋愛中の恋人・海斗に電話し不安をぶつけるが、彼の反応はなぜか歯切れが悪い。見え隠れする元カノの影。悩んだ琴葉は、衝動的に深夜特急に乗り、彼に会いに行くが……。車中、訳アリな面々との出会いが彼女の心を変えていく。心揺さぶる結末が待つハートウォーミングストーリー。
第二回優秀作は、いぬじゅん『北上症候群』に決定!
- 江口
- それでは、第2回の「いきなり文庫! グランプリ」選考会を始めます。これは、すぐれたオリジナル文庫を表彰しようという企画ですが、まず毎月たくさん刊行される作品の中から優秀作を一冊選び、それがいかにすぐれているかを議論検討し、年間最優秀作を戦うのにふさわしいと判断したら、年度末大会に出場となります。今回の優秀作ではあるけれど、年度末大会に出場するほどではないとの結論が出た場合は、「今回の優秀作」として大いに顕彰すると。つまり、前回と今回、ただいまやっているのは、いわゆる地区予選大会ですね。
- 吉田
- わかりやすい。
- 北上
- 来年の3月ぐらいにその決勝大会をやるわけね。
- 江口
- はい。今回の優秀作は、いぬじゅん『北上症候群』。実業之日本社文庫GROWです。
- 吉田
- ざっくり言うと、遠距離恋愛している女性が彼氏の浮気を疑って、夜行列車に乗って札幌まで会いに行く話。
- 江口
- サプライズでいきなり会いに行く。
- 北上
- その途中の車内でいろんな人と知り合うというロードノベルだね。神戸から札幌までの夜行寝台列車は実在するの?
- 江口
- いや、これは作者の創作でしょう。確信犯ですね。
- 北上
- この著者の作品を読むのは初めてなんだけど、略歴を見ると、2014年に『いつか、眠りにつく日』で第8回日本ケータイ小説大賞を受賞してデビューした作家であると。おれはケータイ小説に偏見を持っているので、この『北上症候群』もそういう小説かと思って読み進めました。そういうふうにハードルを低くして読んだのがよかったのか、そこそこ面白く読んだよ。
- 吉田
- それ、褒めているんですか。
- 北上
- 面白く読んだのだから、褒めているぜ。
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