通勤/通学の途中、電車の中で、某学習塾の広告を見かけたことのある人は多いのではないでしょうか。
どれも中学校の入試問題から取られていて、隅っこに答えが小さく書かれていたりするアレです。
中学受験ということは本来小学生向けに作られているはずなのですが、パッと見じゃ解けない問題も多くて。
電車に揺られる間、ついついずっと問題を解くのに熱中したりすることもあるんですよね……昔は苦手だった科目ですら。
今回紹介する『夢中になる!江戸の数学』は、そんな車内広告に熱中するときのような気分が味わえる1冊です。
鎖国中の日本で独自に発展した数学「和算」について、様々な雑学を交えながらその歴史が紹介されています。
「江戸時代は、庶民の間で数学が大流行していた(もちろん、当時は受験なんてないのに!)」から始まり、
「難題が解けたら神様仏様に感謝し神社へ奉納していた」
「数学書を印刷するために多色刷りの技術が発展した(これがなければ浮世絵も存在しなかった!)」などなど……。
中でも私が一番驚いたのは、300年近くも前のこの時代に「円周率を41桁まで求めていた」、しかも
「円を正1024角形とみなすことによって」……ということ。
正六角形なら想像できますが、1024となるともはや頭では想像できない図形。
そんな図形を使いこなしていたというのがまず驚きです……!
今の時代、円周率はコンピュータによってウン十兆ケタ以上計算されているらしいですが、そんな自動的に出てくる数字より、コンピュータなんて影も形もないこの時代に計算された41桁の方が凄いですよね。
でもそんな「和算」も、西洋文化の流入によって衰退していきます。
西洋から来た「洋算」を学校で学ぶうち、現代の日本人から数学に対する興味は失われていきつつあるのかもしれません。
ただそれでも、「何かの役に立てるためではなく、楽しいから学ぶのが日本の数学だった」と言う和算に対する情熱は受け継がれているはず。
数学が得意だった人にはもちろん、いつからか苦手になっていたような人にもぜひ読んでほしい、サクッと読めて江戸時代に思いを馳せられる1冊です。
- マクロ福田
- 最近お腹が気になる販売担当
- 理系出身で、修士論文は"2-ヒドロキシピリジン類の固体状態における互変異性平衡"だったのになぜか出版社に入社。配属後すぐに会社の釣り部に入部して、月一で沖に出ている。日本酒が好きで、旅行に行って必ず買うのは地酒とぐい飲み。小説は空き時間に一気に読んでしまいたいタイプ。
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2017.06.22 夢中になる!江戸の数学 桜井 進 著
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2017.02.17 スイーツレシピで謎解きを 友井 羊 著
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2016.05.20 Ker 死神の刻印 エメリー・シェップ 著
/ヘレンハルメ美穂 訳