販売担当まろのオススメの本
『桜小町 宮中の花』 篠 綾子 著
作品制作・写真/金沢和寛
私は普段、それほど歴史小説は読んでいない。けれど、今回、この本を選んだのは、「知的な美人」が大好きだからである。
実のところ、最初は、堅苦しい歴史小説かもしれない、とおそるおそる読み始めた。が、ミステリーのような、謎が明かされる側面にわくわくし、小野小町をとりまく恋愛模様に猛烈に心がときめいた。
複雑な人間関係は、会話を読んでいけば、すんなりと理解でき、その手法に驚く。
今よりも男社会であった時代に様々な男性に言い寄られ、一方で嫉妬深い女性に嫌がらせをされても、ひらりひらりと躱しながら生き抜く姿、まさに憧れる。こんな経験はとんとないが、もし私が同じ状況だったら、喧嘩を売ってしまいそうだ。美人過ぎるのも大変だ。
さて、世界三大美人といわれるからには、容姿が際立って言い伝えられてきたわけだが、彼女がどのように生きたのかは、ぴんと来ない人も多いのではないだろうか。
この物語を読むと、彼女の人生が鮮やかに浮かび上がってくる。
何を思い、宮中にとどまり、帝に仕えていたのか。帝への恋心ゆえだったのか、違うのか。
持ち前の賢さを武器に、宮中で渡り合う姿は、凜として美しい。
ときおりにじみ出てくる儚さが、彼女の魅力をより高める。
最後まで読んで、ふと気づいた。
彼女は、自分が美しいことを自覚しているが、美貌を武器にはしていないのである。
もっと美しさを鼻にかけた部分が出てくるかと思っていた。
それはそれで物語としては楽しいのだが、私の浅い思惑など軽く飛び越えて、「小野小町」という女性は本当に素敵だった。
魅力あふれる知的な美人がお好きな方(きっとすべての人間)に、この本を熱烈におすすめしたい。
プロフィール
- まろ
- 身体の半分は酒と肴でできている販売担当。肉より魚派。お酒に弱くなってきたのが、最近の悩み。
- 趣味は料理。盛り付けのセンスは皆無。
- 読み物の好みは、青春ものとファンタジー。
「こんな10代、私にはなかった」と彼らの青春に嫉妬し、「こんな世界に逃亡したい」とファンタジーで妄想を膨らませる毎日です。
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