“きんのつの”ってなんだろう？
私が最初にタイトルを聞いたときに感じたことだ。
同じように思う人も多いのではないだろうか。

金の角が何かは、読んだ後のお楽しみとしておきたいが、ネタバレしない程度に話しておくと、それはとても素敵なものだった。

サッカーを頑張ってきた俊介が、サッカーをやめて、自らの意思で中学受験に挑む。彼は勉強が決して得意ではない。誰が考えても厳しいなか、ひたむきな努力に胸を打たれる。

この小説は両親→俊介→塾講師（加地先生）、それぞれの視点で三章からなっている。
最初は戸惑い、反対もしてしまった両親は、徐々に彼の夢を応援するように。
そして俊介の日本最難関中学を目指した理由が明らかになると、少しずつ夢に近づいていく。
加地先生のサポートも素晴らしく、先生自身の願いも、第三章にあふれている。
読みながら、彼らを心から応援してしまった。そして、それぞれの成長していく姿に、涙を流さずにはいられなかった。

私は大の勉強嫌いで、受験がとにかく嫌で嫌でたまらなかった。
とはいえ、勉強が必要だとは思っていたので、不本意ながら受験に向かったことを覚えている。
一方で、あの日々において、私にも、もしかしたら、金の角が生えていたかもしれない。
そう考えると、とても誇らしい気持ちになった。
今、角が生えているかは、少々自信がないが、間違いなく、この先頑張る力をもらえた。