今回、みなさんにオススメするのは冲方丁さんの『もらい泣き』です。
冲方さんご自身が延べ数十人から「泣ける話」を聞き、実話を基にショートストーリーにした短編集です。亡き妻の手が写真に写っているけど暖かい気持ちになる…「心霊写真」、男性しかいない出版社に入社した女性の悲喜劇を描いた「ハンバーグとパンプス」、プロのミュージシャンになるために努力し続けた男を描いた「音楽と十円ハゲ」など全33本。テーマや登場人物も多種多様で、必ずお気に入りの一本（いや、それ以上！）が見つかるはずです。

　その中で一番泣けたのは「女王猫」。
　傍若無人で約束を守らないけど、なぜか仕事も順調、友人からも愛されるツンデレでマイペースな女性が主人公。その秘訣を冲方さんが聞いたところ、彼女から返ってきた答えが子供の頃に猫を飼っていた、と。その猫は家族全員を思いのまま操るために、何かにつけて「シャァー！」と威嚇するまさに女王猫。ただ、落ち込んだ時には超能力者みたいに察知してそばにいてくれる。“女王”というのは女性と猫をさしていて、その魅力にみんなが吸い寄せられてしまうのです。
　そして、そんな猫との別れのシーンには、ただ涙、涙…。僕も猫を飼っているので、猫のぬくもりがとたんに恋しくなりました。

　最後に一本ご紹介するのが、小屋のかわりにクルマの中で犬を飼うことになった女性と老犬の交流を描いた「ドッグハウス・カー」。なんと「乃木坂46」西野七瀬さん主演でショートムービーを作りました。あまりのチャーミングさにあっという間にファンになりました。ぜひご覧になって下さい！
https://www.youtube.com/watch?v=M-05vyxuubM