- 『サイファー・ピース・ダンサーズ』国仲シンジ ハルキ文庫
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遊間悠一カは中学三年の夏、ニューヨークで開催された世界最強を決めるダンスバトル、B−BOYの祭典で世界一に昇り詰めた。だが、彼は自らの才能のなさに打ちのめされていた。帰国した悠一カは、父の死と母の転勤に伴う福岡への転居を機にダンスをやめた。県内有数の進学校で勉強に励む彼は、学内のテストで一番を取り続ける日向あかりと巡り会う。その出会いが彼を再びダンスへと誘う……。元ストリートダンサーが描く高校生ダンサーズ!
第4回「いきなり文庫! グランプリ」栄えある優秀作は、国仲シンジ『サイファー・ピース・ダンサーズ』だぁ!
- 江口
- 今回の優秀作は、国仲シンジさん『サイファー・ピース・ダンサーズ』です。タイトルからも明らかなように、ストリートダンスを描いた作品ですね。もちろん、ダンスシーンもあって、その軽快な感じがよく描けている。私は初めて読む作家なんですが、大変興味深く読みました。ちなみに今回の参考図書は、近藤史恵さん『サクリファイス』、森絵都さん『DIVE!!』、川端裕人さん『空よりも遠く、のびやかに』の3作にしました。それぞれ、自転車ロードレース、飛込競技、クライミングを描いた作品で、つまりは優秀作と同様にマイナースポーツ小説です。
- 北上
- まず最初に言っておかなければならないのは、国仲シンジさんは、2021年に『僕といた夏を、君が忘れないように。』で第27回電撃小説大賞を受賞してデビューした作家なんですね。こういうライトノベルから出てきた作家がその後、一般文庫で書き下ろし作品を書くという傾向が最近は増えているんですが、中には我々には読みにくい文章を書く人も少なくない。これは誰が言っているんだと発言の主がわからない作品は論外としても、飛躍がありすぎる作品もあったりするから少々辛(つら)かったりする。そういう一群の作品の中にこの『サイファー・ピース・ダンサーズ』を置くと、きらっと光っていると思う。文章がなめらかで、物語の中に自然に入っていくことが出来る。つまり、骨格がしっかりしている。
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