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対談 桜木紫乃氏×東山彰良氏

対談 桜木紫乃氏×東山彰良氏

北海道と九州。距離こそ離れてはいるけれど、「彰良にいさん」「桜木ねえさん」と互いを呼び合うほどに仲の良い桜木紫乃さんと東山彰良さん。
結果的には緊急事態宣言の合間を縫う形で、桜木さんが九州博多&小倉を訪れての対談となりました。
福岡の「ブックスキューブリック」さんで、読者の皆様に囲まれて(でも、時節柄感染対策はバッチリ)のトークイベントの様子をお送りします。

『短編ホテル』に揃(そろ)ってご執筆いただいているおふたりのなごやかな空気をお楽しみください。この時点ではまだ短編をご執筆前でしたが、横断歩道論、カニかま論なる創作論も飛び出して……。この対談を読めば、より作品が面白くなること間違いなしです。

あたたかい拍手で迎え入れられ、まずはおふたりの御縁の話からスタートします。


東山
桜木さんとの縁というと……。双葉社が主催している「小説推理新人賞」で、三年間(2017年〜2019年)一緒に選考委員をさせていただいたのがそもそもの御縁です。選考委員は、僕と桜木さん、もう一人は朱川湊人さんの三人でやらせていただいて。それからですよね。
桜木
そうです。御挨拶が遅れました。桜木紫乃です。北海道の飛び道具と呼ばれています。今日はよろしくお願いします。(会場拍手)
彰良にいさんは、初めて会ったときは硬かったんです。知り合って何年か経(た)つうちに、だんだん軟らかくなったよね。
東山
そうですね。今では彰良と紫乃ですから。
桜木
新ユニットで。
東山
はい。
桜木
彰良と紫乃でよろしくお願いします。
東山
…………。
桜木
(ちらりと東山さんを見て)真っ白になった?
東山
いやいやいや。まだ何か褒めてくれるのかなと思って。
桜木
いろいろ褒め言葉はあるよ。この人に書き手として大変惹(ひ)かれたときのお話をしますね。当時、小説推理新人賞って、最終選考に残る原稿が五〜六本あったんですが、その中に三年間でただの一回も「これいいね」がなかったんです。
東山
でも、まあ、あの三年間は、多分ですけど、若干不作だったんじゃないかなと。
桜木
応募してくださった皆さんには申し訳ないんだけれども、最終選考に残った五、六本を前に好きなことをああだ、こうだ言うわけですよ。ちょっと聞かせられないような話を。
東山
そうですね。
プロフィール

桜木紫乃(さくらぎ・しの) 1965年北海道生まれ。2002年「雪虫」で第82回オール讀物新人賞を受賞。07年同作を収録した単行本『氷平線』でデビュー。13年『ラブレス』で第19回島清恋愛文学賞、同年『ホテルローヤル』で第149回直木賞、20年『家族じまい』で第15回中央公論文芸賞を受賞。他の著書に、『硝子の葦』『起終点(ターミナル)』『裸の華』『緋の河』など。近刊に『俺と師匠とブルーボーイとストリッパー』がある。

東山彰良(ひがしやま・あきら) 1968年、台湾台北市生れ。9歳の時に家族で福岡県に移住。2003年、「このミステリーがすごい!」大賞銀賞・読者賞受賞の長編を改題した『逃亡作法 TURD ON THE RUN』で、作家としてデビュー。09年『路傍』で大藪春彦賞を、15年『流』で直木賞を、16年『罪の終わり』で中央公論文芸賞を受賞。17年から18年にかけて『僕が殺した人と僕を殺した人』で、織田作之助賞、読売文学賞、渡辺淳一文学賞を受賞する。『イッツ・オンリー・ロックンロール』『女の子のことばかり考えていたら、1年が経っていた。』『夜汐』『越境』『小さな場所』『どの口が愛を語るんだ』『DEVIL’S DOOR』など著書多数。訳書に『ブラック・デトロイト』(ドナルド・ゴインズ著)がある。