よみもの・連載

対談 桜木紫乃氏×東山彰良氏

対談 桜木紫乃氏×東山彰良氏

桜木
好きな人を書くから、私はやたらとだらしない男ばっかり書いていると言われるんですけどね。何だろうね。だらしなくない男っているのかなと思うんですけど、いる? どこを見るかにもよるけど、男の人って、全方位に格好いいわけないと思っています。
東山
それはそうですね。
桜木
恐らく女も同じで。だから、だらしない男を書いているわけじゃなくて、男の一面を書いたらどうしてもそれが出てくるという。九州の方は私の書いている男をどう読んでいるのかな……。
東山
ねえさん、九州は何回ぐらい来ているんですか?
桜木
今回で三回目なんです。今回は、彰良にいさんにストリップ行かないかと誘われてね。
東山
メールやり取りしていて、桜木さんと一緒にストリップ見れたら愉快だろうなみたいなことを書いて。
桜木
それは愉快だよね、と。
東山
桜木さんは、九州の小倉の劇場に行ったことがないから行ってみたいとおっしゃったので、じゃあ、どこか出版社たらし込んで、連れてきてもらうかと。
桜木
そうしたら、たらし込まれた集英社が。
東山
連れてきてくれたという。
桜木
そういうことなんです。私、九州はいい印象しかなくて、味も好きなの。何食べてもおいしい。私は甘党で、どんな料理にも砂糖を入れるんですが、九州の食べ物って大概少し甘めですよね。
東山
ここで、桜木さんの本の話を少し。
桜木
面倒くさい話嫌だ(笑)。
東山
いやいや、面倒くさい話ということは……なきにしもあらずですけど。
僕が桜木さんの本を読んで一番いいなと思うのは、きちんとエンタメをしつつ、諦めについて書かれている。その諦めというのは、言葉を換えれば、自分を受け入れる過程みたいなものじゃないかと思うんですよ。
桜木
受け入れる過程ね。
東山
そう。コミュニティーに受け入れられない性分の主人公がいる。けれども、その主人公自身が自分を受け入れていく過程というのは、ポジティブな表現をすると、次の一歩を踏み出す過程とも言えるけど、ちょっとネガティブな表現をすると、諦める過程。何かを諦めて、何かを得ることを書いているような気がしていて、僕は、自分の好きな小説の共通点を抽出してみると、どれも諦めについて書かれているような気がするんですよ。そういうことは意識して書かれたりしますか。
桜木
私は北海道で一番諦めない女と言われているんだけど。
東山
作家は諦めちゃ書けないですからね。
プロフィール

桜木紫乃(さくらぎ・しの) 1965年北海道生まれ。2002年「雪虫」で第82回オール讀物新人賞を受賞。07年同作を収録した単行本『氷平線』でデビュー。13年『ラブレス』で第19回島清恋愛文学賞、同年『ホテルローヤル』で第149回直木賞、20年『家族じまい』で第15回中央公論文芸賞を受賞。他の著書に、『硝子の葦』『起終点(ターミナル)』『裸の華』『緋の河』など。近刊に『俺と師匠とブルーボーイとストリッパー』がある。

東山彰良(ひがしやま・あきら) 1968年、台湾台北市生れ。9歳の時に家族で福岡県に移住。2003年、「このミステリーがすごい!」大賞銀賞・読者賞受賞の長編を改題した『逃亡作法 TURD ON THE RUN』で、作家としてデビュー。09年『路傍』で大藪春彦賞を、15年『流』で直木賞を、16年『罪の終わり』で中央公論文芸賞を受賞。17年から18年にかけて『僕が殺した人と僕を殺した人』で、織田作之助賞、読売文学賞、渡辺淳一文学賞を受賞する。『イッツ・オンリー・ロックンロール』『女の子のことばかり考えていたら、1年が経っていた。』『夜汐』『越境』『小さな場所』『どの口が愛を語るんだ』『DEVIL’S DOOR』など著書多数。訳書に『ブラック・デトロイト』(ドナルド・ゴインズ著)がある。