第7回いきなり文庫GP座談会
- 江口
- では次に、参考図書に移りましょう。『ひなた旅館』とは旅館繋がりということで、柏井壽さん『海近旅館』です。旅館繋がりというだけでなく、内容も似てます。こちらは静岡の伊東にある、実家の旅館を継ぐことになった女性の物語です。
- 吉田
- ヒロインは、亡くなった母親に代わって、女将(おかみ)として働き始めるんですが、名女将だった母親には、当然のことながら及ばない。板長をつとめる父親は、かつては魚料理に定評があったのに、つれあいを亡くしてからはやる気を失っている。このままでは、旅館の経営が危うくなってしまう、というマイナスからのスタートです。こちらも、『民宿ひなた屋』と同様、お話自体はいいのだけど……。
- 江口
- 「ひなた屋」よりは振幅がありますよね。変なお客が来たりとか、ちょっと捉えどころのない料理人が出て来たりして。
- 吉田
- ヒロイン・美咲が女将として成長していくのもいい。海が近い「だけ」が取り柄の旅館を、どうやって盛り立てていくのか、というのもいいですよね。
- 浜本
- 温泉がない、というのはこの辺りの旅館としてはきつい。でも、その代わり、海が近くて景色が素晴らしい。
- 吉田
- これね、物語は悪くないんですよ。悪くないどころか、好きな物語なんです。ただ、各章の終わりに、「美咲のおすすめ宿厳選8軒」というのが付いていて、これがもうね、目障りで目障りで。
- 江口
- 私は、吉田さんはそう言うと思っていました(笑)。
- 吉田
- 見抜かれていた(笑)。
- 浜本
- どうしてこれを付けちゃったんだろう? 字も小さいから、読みづらいですよね。
- 吉田
- また、お高いときてるんだ、このお宿が。そこが一番イラっとしました(笑)。実家の旅館、大変じゃないの? どこにそんな贅沢するお金があるの? と。
- 浜本
- 宿泊料金を調べたの?
- 吉田
- 検索しました! お高いです!
- 江口
- 僕は、このガイド的なコラムは全部飛ばして読みました。本編を読み終えてから読んだので、そこまで気にはならなかったんですが。検索したのは、行きたくなったからですか?
- 吉田
- 違います!(笑)。知らない土地だったりしたので、どれどれ、どんなお宿かな? と興味をもったんです。でも、こんなにお高いお宿、泊まれませんよ。すみません、僻(ひが)みです(笑)。
- 浜本
- 美咲と智也が奮闘して、旅館が儲(もう)かるようになったんですよ、きっと。
- 吉田
- ガイド的なコラムを付けるにしても、せめてまとめて巻末にして欲しかった。