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2021年・新春特別企画 堂場瞬一さんインタビュー

2021年 新春特別企画 堂場瞬一さんインタビュー

聞き手・細谷正充さん
構成・文/宮田文久 撮影/織田桂子

「8年」で第13回小説すばる新人賞を受賞し、デビューして今年で20周年。警察小説やスポーツ青春小説、はたまたジャンル分け不能な変化球小説……と、幅広い物語を紡ぎ出す一方で、海外ミステリー応援隊として、熱く進み続ける堂場瞬一さん。そんな堂場さんのこれまでの20年、そしてこれからをじっくり語ってもらいました!


出島
新年、明けましておめでとうございます。2021年、堂場瞬一さんは作家デビュー20周年を迎えられました。今回は新春特別企画として、これまでの堂場さんの歩みについて、文芸評論家の細谷正充さんにインタビューしていただこうと思っております。
細谷
20周年、本当におめでとうございます。
堂場
ありがとうございます。おかげさまで、無事に記念の年を迎えられました。
細谷
昨年末に刊行された最新作『共謀捜査』も、大変面白かったです。2013年刊行の『検証捜査』以来、6作目となるシリーズ──ではなく、すべて『検証捜査』のスピンオフ作品とされる堂場さん曰(いわ)く〈捜査〉ワールドの完結編ですね。今回のインタビューはそこに至る、2001年1月のデビュー作『8年』から現在までの経緯を伺いたいと思います。
堂場
いやはや、20年という年月ですから、僕自身が覚えているかどうか……(笑)。
江口
そこは初代単行本担当者として、私が横からツッコミを入れさせていただきます(笑)!
細谷
ええ、ぜひ(笑)。まず『8年』ですが、アメリカのメジャーリーグを舞台にした野球小説でしたが、そもそもデビュー作がスポーツ小説というのが、当時としてはかなり珍しかったと思うんです。改めて、なぜスポーツ小説だったのでしょう。
堂場
すいません、正直、ストレス解消だったんです。本当は、推理小説界の新人賞である江戸川乱歩賞をとって、華麗にデビューする予定だったんですよ(笑)。でも最終選考までいって落ちるということが何度か続いて、ミステリーは厳しいな、まったく違うものを書いてみよう、と。『8年』を応募した「小説すばる新人賞」って対象がノンジャンルなので、何を書いてもいいわけですから、ストレス解消で野球を書いて出してしまいました……というのが本当のところなんです。
細谷
才能を持ちつつもプロ入りしなかった投手が、30歳を過ぎていきなりメジャーリーグに挑戦する、という話でしたね。
堂場
日本のプロ野球からメジャーに、というルートは、ちょうど2001年にイチローがシアトル・マリナーズ入りしたように、ある程度できていたんですよね。それに対して、プロの経験が全然ないアマチュアの人をいきなりレベルの高いところに放り込んだらどうなるか、というのをやってみたかった。いまだにそうした例は、社会人野球からメジャー入りして成功した田澤純一くらいじゃないでしょうか。
プロフィール

堂場瞬一(どうば・しゅんいち) 1963年茨城県生まれ。青山学院大学卒業。会社勤務のかたわら執筆した「8年」で第13回小説すばる新人賞受賞。スポーツ青春小説、警察小説の分野で活躍中。著書に『いつか白球は海へ』『検証捜査』『複合捜査』『解』『共犯捜査』『警察回りの夏』『オトコの一理』『時限捜査』『グレイ』『蛮政の秋』『凍結捜査』『社長室の冬』など多数。

細谷正充(ほそや・まさみつ) 1963年埼玉県生まれ。時代小説とミステリーを中心に、文芸評論家として活躍。著書に『必殺技の戦後史』『少女マンガ歴史・時代ロマン決定版 全100冊ガイド』『歴史・時代小説の快楽 読まなきゃ死ねない全100作ガイド』、編著に『くノ一、百華』『きずな 時代小説親子情話』『時代小説傑作選 土方歳三がゆく』など。

江口洋 堂場さんの元担当編集。

出島みおり 集英社文庫編集長

集英社文庫の堂場瞬一作品。刊行順は下段→上段、左→右。一番初めの『8年』は2004年刊。

文庫化を控えている単行本作品。『ホーム』は19年ぶりに書いた『8年』の続編。