2メートル４３センチ。高校バレー全国大会のネットの高さだ。

田舎の弱小バレー部が全国を目指す話、といえば、それなりに物語を想像できるかもしれない。
断言したい。その想像はきっと超える。
文字だけで、ここまでバレーをしているシーンが思い浮かぶことに驚くだろうし、いつの間にか、彼らのやりとりが鮮明に脳裏で繰り広げられるだろう。

登場人物が、全員、ただひたすら愛おしい。

「この人とともに、上り詰められるとこまで上り詰めたい」という出会いは、現実にはそうそうあるものではない。
しかし、この本を読むと、一緒に夢を見られるような気がする。
人間関係の構築が下手な一方で、圧倒的なバレーの才能を持ち合わせる“天才”・公誓（きみちか）。
悪意があったわけではないのに、部活で深刻なトラブルを起こしてしまったために引っ越し、母方の郷里・福井でかつての幼なじみに再会する。
憧れや嫉妬を感じながらも“天才”の隣で努力できる、身体能力には恵まれた少年・祐仁（ゆに）。
二人を取り巻く、部活の仲間たち。
10代の時特有の、言葉にしづらいもどかしい感情。
彼らの成長する姿がまぶしく、私が歩めなかった青春を、疑似体験させてもらえた。

この物語が、もうすぐ連続アニメになる。（2021年1月より放送予定）
世の中に、たくさん、心から楽しみにしている人がいるはず。私もその一人だ。
私は、まちがいなく、登場人物たちをもっと愛おしく感じるようになる。
彼らを知らない人は、まず、アニメから見てほしい。
そして、原作に手を伸ばしていただけることを願う。

最後に、方言男子がとても良いので、それもまた一つのおすすめポイントだ。