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今回の優秀作は青春時代小説、吉森大祐『青二才で候』に!

江口
話がつながったところで、参考図書に移りましょう。藤沢周平さんの『蝉しぐれ』です。やっぱりこれは外せないかと。
吉田
青春時代小説の金字塔ですよね。
江口
そう思います。
吉田
今回、久しぶりに『蝉しぐれ』を読んでわかったことがあるのですが、藤沢さんの作品って、清潔感があるんですよ。その清潔さが、時代を超えて支持されているんじゃないか、と。藤沢さんの作品というか、武家社会や武士を描く時代小説に一番大事なもの、必要なものは、清潔感なんじゃないか。その意味で言うと、砂原さんは藤沢さんの正嫡だと思います。
浜本
砂原浩太朗さんですね。確かに、それは感じますね。
江口
『蝉しぐれ』が傑出しているので、以降の青春時代小説は作者が意図しなくとも、藤沢周平メソッドに落とし込まれていくのかもしれませんね。
浜本
『蝉しぐれ』と比較するのは、この『青二才で候』に限らず、どの作品でも厳しいですよ。
吉田
それだけ『蝉しぐれ』が完璧なんですよね。ただ、『蝉しぐれ』に出てくる文四郎って、15歳なんですよね。今どきの15歳と違うことはわかりますが、文四郎、ちょっと出来すぎじゃないですか? すみません、不出来な息子を持つ母の僻(ひが)みです(笑)。
江口
では、次の参考図書に移りましょう。杉山大二郎さん『大江戸かあるて 鍼のち晴れ』。こちらも青春時代小説です。
浜本
内容について話す前に、この本に関してちょっと疑問に感じたことがあるのですが。
江口
はい。
浜本
表紙のタイトル文字についてなんですが、どうして「鍼」という文字にルビを振らなかったのかな、と。せっかく「はり」と「はれ」をかけているのに、ちょっと勿体(もったい)ない気がしました。
江口
言われてみると確かに。
吉田
あぁ、読めない人もいそうですよね。私はこれ、すごく良かったな。こちらが優秀作でも良かった、と思ったくらいです。「大江戸かあるて」シリーズの第二作で、私は時間がなくて一作めを読めなかったんですが、この二作めから読んでも大丈夫で、一作めの内容も、大体は察することができます。大筋としては、江戸にある日本一の講習所「杉坂鍼治学問所」に入所した主人公・駿の日々を描いたもの。鍼灸(しんきゅう)を題材にしているところが新鮮だったし、弱者を守るための医者を目指す駿には、『青二才で候』の甚九郎に通じるところがある。
江口
そうそう、いい意味での青二才なんですよ。ちょっと真っ直(す)ぐすぎるくらい。
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