プロフィールにも書きましたが、ぼくは大学時代に外国語学部でラオス語を専攻していました。いたる所で「なんでラオス語?」と聞かれましたが、そんなぼくも思いました。「高野さん、なんでソマリア?」
長く内戦が続き、テロもしばしば発生する無政府状態。外務省の海外安全ホームページを見ても、全土に渡って「危険情報レベル4」(最高レベル。退避勧告)の赤で塗りつぶされています(2018年6月14日現在)。そんな世界で最も危険なエリア、ソマリアに高野さんは恋してしまったというのです。
本書によると、ソマリ人は「あたしのことをそうやすやすとわかられてたまるか」という高慢な美人のようなプライドを持ちあわせているらしく、高野さんがソマリの真の姿を知りたい、ソマリに自分のことを認めてもらいたい、と頑張って取材しながらソマリ人と向かい合っているうちに、好きで好きでたまらなくなった、というわけです。
さて、高野さんが出会うソマリ人は個性的な人たちばかり。常に命を狙われ続けているジャーナリスト、不思議な商売をする人気ミュージシャン、父の仇の娘を嫁にもらった男、見栄っ張りな知事……。
そんな人々のことを高野さんが面白おかしく、突撃レポート風に紹介するので、読んでいると危険な地域に住む人々のこととは思えなくなってきます。
もちろん、戦闘行為は日常茶飯事。行ったレストランが三年後にテロで爆破されていたり、通っている道のすぐ横にロケット弾を撃ち込まれて炎上している車両があったりと、同行してくれる兵士の存在が欠かせません。
でも本書を読んでいると、危険なことは承知しつつも、あまりにも面白そうなので行きたくなってしまいます。
本書のなかでもオススメなのは、「ソマリ最大の秘境潜入」。ただでさえ世の人々に知られていないソマリ世界。さらにその「最大の」秘境とはどんなところなのか。あえてここでは言いませんが、外国人が潜入するには本当にハードルが高い場所なのです。ぜひ本書で確かめてみてください!
人間いくつになっても恋ができますし、大冒険だってできます。ぜひみなさんも本書を読んで新たな世界を体験し、ソマリワールドに恋してみてください!
- アラーキー
- 常に何か食べてる宣伝担当
- 大学で専攻していたのが「ラオス語」というだけで珍しがられ、就職戦線を乗り切った30代。食べ物も本も好き嫌いはなくて何でも好き。見たことのない食べ物があればとりあえず食べ、タイトルやカバーが良いと思った本はとりあえず買う。趣味は秘境駅巡りと野球観戦(カープファン)とバドミントン。
-
2021.7.15 ナツイチ2021
-
2021.3.19 辺境の怪書、歴史の驚書、ハードボイルド読書合戦 高野秀行/清水克行 著
-
2020.11.20 名も無き世界のエンドロール 行成 薫 著
-
2020.6.19 ナツイチ2020
-
2020.3.19 あのこは貴族 山内マリコ 著
-
2019.11.20 ひとよ 長尾徳子 著/原作・桑原裕子
-
2019.7.19 慈雨 柚月裕子 著
-
2019.2.20 みかづき 森 絵都 著
-
2019.2.1 我が家のヒミツ 奥田英朗 著
-
2018.12.7 根本陸夫伝 プロ野球のすべてを知っていた男 髙橋安幸 著
-
2018.07.20 恋するソマリア 高野秀行 著
-
2018.01.19 オトコの一理 堂場瞬一 著
-
2017.03.17 桜のような僕の恋人 宇山佳佑 著
-
2016.11.18 全一冊 小説 上杉鷹山 童門冬二 著
-
2016.06.23 チア男子!! 朝井リョウ 著
-
2016.02.19 無伴奏 小池真理子 著
-
2015.11.20 狭小邸宅 新庄 耕 著