アラーキーオススメの本
『我が家のヒミツ』 奥田英朗 著
今回オススメするのは直木賞作家、奥田英朗さんの作品『我が家のヒミツ』です。
父親、娘、母親、妻、どこにでもある家族に訪れる危機、転機といえるような大きな状況の変化を描いた6編の短編集です。
各編の内容は……
- 結婚して数年。どうやら自分たち夫婦には子どもが出来そうにないことに気づいてしまった妻の葛藤。
- 53歳で同期のライバルとの長年の昇進レースに敗れ、これからの人生に戸惑う会社員。
- 16歳の誕生日を機に、自分の実の父親に会いに行こうと決意する女子高生。
- 妻が急逝し、残された父と社会人2年目長男と大学生の長女の3人暮らし。みるみる衰えていく父にできることは……。
- 産休中なのに、隣家の謎めいた夫婦が気になって仕方がない。物音も立てない隣人の外出する音を聞いた妻が取った行動は。
- ロハスやマラソンにはまった過去を持つ妻が、今度は市議会議員選挙に立候補すると言い出し……。
それぞれの話で主人公が落ち込み、思い詰めてこのまま悲劇の結末になってしまうのでは……とハラハラする場面展開がやってきます。でも最後は気持ちがスッキリ晴れ渡るエンディング。家族の暗いテーマを扱った作品なのにこの読後感の清々しさ。
最近人口減少や定年後の生き方に関する本が小説、ノンフィクション問わず売れています。未来がないと悲観して、自分と同じような環境にある人が多くいると納得して…点という内容の作品が多いです。暗いです、平成が終わりつつある日本。でも『我が家のヒミツ』は違います! 場面設定や状況描写に自分の境遇を重ね合わせられる絶妙さもありつつ、最後は「よし! 明日も頑張って行くぞ!」という気持ちで読み終われます。
そして、家族以外の友人や同僚など、支え励まし、時に厳しく戒めてくれるキャラクターが各篇に登場します。思わずこんな人が周りにいてくれたらいいよな……なんて気にも。
『我が家のヒミツ』は家族にまつわる短編集の第3弾となっております。第1弾『家日和』、 第2弾『我が家の問題』もオススメです。世界観にハマった方は前2作も是非手にとっていただければと思います。
プロフィール
- アラーキー
- 常に何か食べてる宣伝担当
- 大学で専攻していたのが「ラオス語」というだけで珍しがられ、就職戦線を乗り切った30代。食べ物も本も好き嫌いはなくて何でも好き。見たことのない食べ物があればとりあえず食べ、タイトルやカバーが良いと思った本はとりあえず買う。趣味は秘境駅巡りと野球観戦(カープファン)とバドミントン。
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2021.7.15 ナツイチ2021
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2021.3.19 辺境の怪書、歴史の驚書、ハードボイルド読書合戦 高野秀行/清水克行 著
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2020.11.20 名も無き世界のエンドロール 行成 薫 著
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2020.6.19 ナツイチ2020
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2020.3.19 あのこは貴族 山内マリコ 著
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2019.11.20 ひとよ 長尾徳子 著/原作・桑原裕子
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2019.7.19 慈雨 柚月裕子 著
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2019.2.20 みかづき 森 絵都 著
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2019.2.1 我が家のヒミツ 奥田英朗 著
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2018.12.7 根本陸夫伝 プロ野球のすべてを知っていた男 髙橋安幸 著
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2018.07.20 恋するソマリア 高野秀行 著
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2018.01.19 オトコの一理 堂場瞬一 著
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2017.03.17 桜のような僕の恋人 宇山佳佑 著
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2016.11.18 全一冊 小説 上杉鷹山 童門冬二 著
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2016.06.23 チア男子!! 朝井リョウ 著
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2016.02.19 無伴奏 小池真理子 著
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2015.11.20 狭小邸宅 新庄 耕 著