販売担当 シマシマ オススメの本
『23分間の奇跡』 ジェームズ・クラベル 著/青島 幸男 訳
作品制作・写真/金沢和寛
今回ご紹介するのは『23分間の奇跡』。クラスに新しい先生がやってきてからの23分間、“最初の授業”を描いた1冊です。
新しい先生に対して警戒し、嫌悪を抱いている生徒たち。新しい先生が「朝、おきょうしつで、さいしょになにをするの?」と聞くと生徒は「まず、こっきにちゅうせいをちかい、それから、歌をうたうんだ」と答えます。それに対して、先生は生徒たちへ「ちかう……ってなんのこと?」「ちゅうせい……ってなんのこと?」「いみもわからないのに、むずかしいことばをつかったりするのは、よくないわ」と問いかけていきます。前の先生は教えてくれなかったのかと聞かれ「ちかいかたをおぼえさせられて、やれっていわれただけだよ」おとうさんやおかあさんに意味を聞かなかったか質問しても「きかなかったわ。でも、おぼえないといけないの」との答え。生徒たちの“これまで”を問い直していく23分間が描かれています。
全184ページのうち前半90ページが和訳、後半は英文が掲載されています。和訳と英文の間にある英国生まれの著者ジェームズ・クラベルの後記に記されていますが、アメリカ市民で6歳になろうとしている著者の娘がはじめて受けた授業で体験したことを聞きその日に記したという唯一の短編です。
和訳をされた青島幸男さんのあとがきにこのようなことも記されています。「児童書の形態はとっているが、それは一つの擬態であり、実は大人たちのための問題提起の書である。」
昨今思い当たるような出来事やニュースも多く、本書の発売から30年以上経った今、改めて手にとっていただきたい1冊です。
プロフィール
- シマシマ
- ワインが、お酒が好きすぎてワインエキスパートの資格を取ったノムリエ販売担当。本よりお酒のウンチクを語る時の方が饒舌??
- 男くさい、涙を誘う本がフィクション・ノンフィクション問わず好み。令和の時代に昭和からアップデートされていない自分を顧みて、他のジャンルの食わず嫌いはいかんと思う日々。旅行に出かける前にたくさん本を買い込んで荷物がついつい増えてしまうタイプ。
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2023.03.17 23分間の奇跡 ジェームズ・クラベル 著/青島 幸男 訳
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2022.07.20 カティンの森 アンジェイ・ムラルチク 著 / 工藤幸雄 久山宏一 訳
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2022.04.21 腐葉土 望月諒子 著
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2021.12.03 存在の耐えられない軽さ ミラン・クンデラ 著 / 千野栄一 訳
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2021.07.02 しのびよる月 逢坂 剛 著
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2021.02.19 アポロンの嘲笑 中山七里 著
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2020.10.21 日々の100 松浦弥太郎 著
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2020.06.05 M8 エムエイト 高嶋哲夫 著
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2020.02.20 めぐりあいし人びと 堀田善衞 著
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2019.10.18 オーパ、オーパ!! モンゴル・中国篇 スリランカ篇 開高 健 著
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2019.06.21 水無川 小杉健治 著