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カピパラくんオススメの本
『世にも奇妙なマラソン大会』 高野秀行 著 |
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今回のオススメ作品は高野秀行さんの「世にも奇妙なマラソン大会」です。
15キロ以上走ったことがない著者が人生初のマラソン大会としてサハラ砂漠のマラソン大会に出場!しかも、アジア代表として挑戦する超絶エンタメ・ノンフィクションです。
ネットサーフィン中に偶然見つけたマラソン大会のHPに酔った勢いで、参加希望のメールを送るところから物語は始まります。開催約3週間前にも関わらず、参加希望は即日参加受理!
夜の9時にスペイン・マドリッド空港に集合すればツアーに参加できるという、まるで飲み会に参加するような気軽さで出場可能に。早速、わくわくとした高揚感と後悔が入り混じります。
なぜなら、ジョギングをはじめたとはいえ、普段走る距離は4キロ〜8キロ。
しかも直近三週間はまったく走っていないにも関わらず42.195キロのフルマラソンに挑戦しようとしているのです!無謀なこと、このうえありません。
早速、現地に向けて出発。マドリッドを経由して、アフリカはアルジェリアの西端、ティンドゥ−フという街に到着。さらにそこから数十キロ離れた西サハラの難民キャンプにホームステイをして大会に備えます。
現地に到着すると、「完走できるのか!?」という不安が襲ってきます。
同じく初マラソンのシルヴィアという女性と一緒に練習へ!同じマラソン初心者とは思えない彼女のスピードについていけず「ほんとに初マラソンなの?」と問いかけると「今までは山岳マラソンしかやったことがない」との返事に、ショックをうけてペースダウンする著者・・・。世界中からマラソンの猛者が集結しているのです!
そして、いよいよ大会当日。道のない砂漠をランナーたちは右と左にきっぱり分かれて走り出していきます!誰もが「どっち?」「どっち?」と周囲に訊きながらも、立ち止まらず走っていきます。運よく正しい道を走りはじめた著者ですが、気がつけばダントツのビリに。
ただ、沿道(砂漠ですので道ではありませんが)には女性や子どもたちが「コッレ、コッレ!」(「頑張れ、頑張れ」の意味)と応援してくれるので、お祭りの主人公のような高揚感のなかで走り続けることができます。給水所で水やナツメヤシの砂糖漬けを口に含みながら15キロ地点を突破!未体験ゾーンに突入したところで「砂」が襲ってきます。
地面を蹴ろうとすると砂がからみついて走りづらい。そんな悪コンディションのなか、目の前に「砂丘」が現れます。足首が砂につかまってまったく走れません!
砂丘の頂上に到達し、下ろうとすればふかふかの砂に埋まっている岩に躓きそうになる罠が待ち受けています。
砂漠という地面の個性に翻弄され続け、ついに足の痛みに耐え切れず、とうとう歩くことを余儀なくされます。それでも、両足が攣っても走れることを発見し、足が攣っている人特有の“謎の走り方”をしながら「サハラ・リブレ、サハラ・リブレ・・・」(「自由のサハラ」という意味)と呟き、自らを鼓舞し続けます。まさにランナーズ・ハイ!
35キロ地点を通過したところでついにゴールが眼下に広がってきます。
感動はありません。頭も心も空っぽで何も感じない。ただ「もうすぐ終わり」と思い、ラストスパートをかけて無事に完走。タイムは5時間40分。
著者曰く、「やりとげた!」という充実感もなければ、「終わった!」という解放感もありません。いちおう完走したという点では少しホッとしたが、後半部分的に歩いてしまった自分に腹が立ちます。ただそれは言葉では表せず、「俺って意外に体力あるでしょ?」と心中とは裏腹におどけてみせただけだった、とのこと。
レース終了後には日本を出てから初めての水浴。水が貴重なところなので、気持ちよいことこの上なく、マラソンを完走したことが夢のように遠ざかっていきます。
カピパラも編集部のマラソン好きに誘われてハーフマラソンに挑戦したことがあります。完走したことに満足はしましたが、走っている最中の記憶はまったくなく、唯一独り言を呟いていたことだけは覚えています。一番の思い出は完走後に食べたバナナとスポーツドリンク!奇妙なことにマラソンって走りきったあとが一番楽しいのかもしれませんね。
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カピパラくん |
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20代だが40代に間違われる笑顔が取り柄の販売担当 |
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欲しいものを我慢出来ずに買ってしまう物欲のかたまり。 本はもちろん、洋服、文房具などとりあえず欲しいものは買ってから必要かどうか考えるタイプ。ちなみに「アッパー(UPPER)」が口グセ。 入社以来、10キロ以上太ったのでスーツだけは買うのを我慢。 乗り物好きなので鉄道・飛行機を舞台にした小説や旅エッセイで心の“トリップ”に出るのが好き。恋愛小説やお仕事小説を読んだときは自分の姿と重ねて物思いにふける。 |
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