1. ウルトラマンは沖縄からやってきた
澤宮 優Yu Sawamiya
本土は、沖縄を邪険にした、差別した、戦争で見殺しにしたと何かにつけ責められる。だがそう批判するだけでは何も解決への道は生まれてこないのではないだろうか。
強すぎる郷土愛のために、よそ者を排除する。その傾向は地方に行けば行くほど強まるが、沖縄にも同様な「空気圧」を本土人の私は感じて、引いてしまうことがある。その視線は、沖縄を出て行った者にも向けられる。私は金城の人生を見ていて、どうしても越えられない大きな壁を感じるのである。彼はウチナンチュでありながら、もうヤマトンチュでもあるという存在になっていた。この二者を区分けした呼び名にも私は、疎外感を受けたような淋(さび)しさを感じる。
だが、金城の作った「ウルトラマン」は正義の味方などという単純な存在でなく、「平和の使徒」なのである。もし彼の魂がそこに生きているとするならば、私たちも沖縄の人たちも「平和の使徒」として、壁を乗り越え、ともに沖縄の問題に目を注ぐことが求められていると考えるのである。それが金城の願いであると信じたい。
参考文献
・森口 豁 『沖縄 近い昔の旅 非武の島の記憶』(凱風社 1999年)
・山田輝子『ウルトラマンを創った男 金城哲夫の生涯』(朝日文庫 1997年)
・上原正三『金城哲夫 ウルトラマン島唄』(筑摩書房 1999年)
- プロフィール
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澤宮 優(さわみや・ゆう) 1964年熊本県生まれ。ノンフィクションライター。
青山学院大学文学部卒業後、早稲田大学第二文学部卒業。2003年に刊行された『巨人軍最強の捕手』で戦前の巨人軍の名捕手、吉原正喜の生涯を描き、第14回ミスノスポーツライター賞優秀賞を受賞。著書に『集団就職』『イップス』『炭鉱町に咲いた原貢野球 三池工業高校・甲子園優勝までの軌跡』『スッポンの河さん 伝説のスカウト河西俊雄』『バッティングピッチャー 背番号三桁のエースたち』『昭和十八年 幻の箱根駅伝 ゴールは靖国、そして戦地へ』『暴れ川と生きる』『二十四の瞳からのメッセージ』などがある。