よみもの・連載

軍都と色街

第十一章 富士山周辺の色街

八木澤高明Takaaki Yagisawa

 梨ケ原を歩いてみると、現在の自衛隊演習場のゲートの辺りには、家は見当たらない。ゲートから下って、国道一三八号線の辺りを歩いてみると、林の中に誰も住んでいない、朽ち果てた民家があった。ただ、記事の写真にあるバラック小屋よりは、だいぶましな作りであるが、お世辞にも立派ではない。その家もパンパンたちに貸されたのだろうか。

景勝地忍野八海とパンパンハウス
 山中湖周辺で、有名な観光地として、知られているのが忍野八海(おしのはっかい)である。富士を眺める景勝地として知られ、最近では日本人ばかりではなく、アジアからの外国人にも人気の観光スポットである。
 この忍野八海のある山梨県忍野村がかつて、米兵たちとパンパンで溢れていたことを知る人は少ないだろう。
 景色を売り物としている忍野村としては、私のような過去を探る人間は招かれざる客以外の何者でもない。

プロフィール

八木澤高明(やぎさわ・たかあき) 1972年神奈川県生まれ。ノンフィクション作家。写真週刊誌カメラマンを経てフリーランス。2012年『マオキッズ 毛沢東のこどもたちを巡る旅』で小学館ノンフィクション大賞優秀賞を受賞。著書に『日本殺人巡礼』『娼婦たちから見た戦場 イラク、ネパール、タイ、中国、韓国』『色街遺産を歩く旅』『ストリップの帝王』『江戸・色街入門』『甲子園に挑んだ監督たち』など多数。

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